サブスクリプションとは?定期購入との違いやECでの活用事例を解説

サブスクリプションとは?定期購入との違いやECでの活用事例を解説

「サブスクリプション」と呼ばれるビジネスがEC業界で注目を集めています。サブスクリプションのビジネスモデル、メリット、定期購入との違い、EC業界で注目される理由などについて解説します。

サブスクリプションとは?

サブスクリプションとは、ユーザーが月額料金や年会費などを支払うことで、契約期間中に商品やサービスを利用する権利を得られるビジネスモデルです。月額制の音楽ストリーミングサービスや、動画の見放題サービスなどがサブスクリプションに該当します。

BtoBの分野でもサブスクリプションは広がっており、アドビ株式会社の「Photoshop」や「Illustrator」など、かつては買い切り型だったソフトウェアがサブスクリプションへと移行しました。リモートワークなどで利用されるオンライン会議システム「Zoom」や、ビジネスチャットツール「Slack」などもサブスクリプションで提供されています。

サブスクリプションは古くから存在

サブスクリプションは「定期購読」という意味を持つ単語であり、ビジネスモデルそのものは新しいものではありません。

健康食品等の定期購入や新聞の定期購読、鉄道の定期券、通販のビジネスモデルである「頒布会」などもサブスクリプションの1つです。頒布会とは、月額会費を支払うと毎月異なる商品が送られてくるサービスのことで、日本郵便が手がけている「ふるさと会(毎月、旬の果物や食材が送られてくる会員制サービス)」などがあります。カタログ通販の老舗である千趣会は、1950年代から料理レシピのカードが入った、食に関する情報誌の頒布会を手掛けていました[1]

サブスクリプションの主な種類

オンラインビジネスにおけるサブスクリプションは、利用者が増えても提供コストが大きく変わらない商品・サービスとの相性が良いため、ソフトウェアやデジタルコンテンツなどの分野で先行して普及しました。そして近年は、商品(物品)を扱うECにおいてもサブスクリプションが注目されています。

EC業界でサブスクリプションに注目が集まっている背景には、物を購入せずに共有して必要なときにだけ使用する「シェアリングエコノミー」の広がりがあります。また、多くの商品を試したいというニーズや、自身の嗜好に合わせてEC事業者から商品を提案してもらいたいと考える消費者が増えていることも一因です。そういったニーズを受け、ECシステムや在庫管理システム、物流システムなどの進化によって、従来は実現しにくかったさまざまなサブスクリプションサービスが生まれました。

今回は物販系ECと親和性が高い「定期購入型」「ユーザーセレクト型」「キュレーション型」「レンタル型」のサブスクリプションについて、例を交えて解説します。

①定期購入型

定期購入は、同一の商材が定期的に届くサービスです。商品の内容や数量、購入頻度、1回あたりの購入金額などを注文の時点で決定すると、商品が自動的に届きます。クレジットカード決済や口座振替などを利用すれば、支払いも自動的に行われます。同じものを定期的に買うユーザーにとって、注文手続きを省略できるため便利です。また、EC事業者にとっても、受注処理が簡略化できるほか、継続的に売上を確保できるメリットがあります。

特に健康食品や化粧品などの消耗品は、定期購入との相性が良いため、多くの通販会社やEC事業者が取り入れています。

②ユーザーセレクト型

月額費用を支払うと、複数の商品の中から好きな商品を自分で選んで注文できるサブスクリプションサービスなどが当てはまります。例えば、数種類のビールやチューハイなどの中から、好きなお酒を組み合わせて1か月分(30本)を指定すると、毎月30本が届くといったサービスです。会員はECサイトのマイページから、1か月単位で、お酒の組み合わせを自分の好みに合わせて変更できます。

ユーザーセレクト型のサブスクリプションサービスは、「色々な商品を試しながら、好みの商品を見つけたい」「季節や、そのときどきの気分に合わせて商品を変えたい」という消費者のニーズを満たします。そのため、食品や酒類、コスメなどの嗜好品と相性が良いサブスクリプションサービスです

③キュレーション型

EC事業者などサービス提供者が商品を選定し、定期的に届けるサービスです。商材の目利きのプロが、消費者にとって最適な商品を見極めて提供します。例えるなら、飲食店でワインソムリエが消費者の好みや気分に合わせてワインをセレクトするイメージです。

キュレーション型のサブスクリプションサービスは、アパレルや食品、生花などの分野に見られます。生花を定期的に届けるECサイトであれば、消費者の好みに合わせてフラワーコーディネーターが毎月異なるブーケをアレンジしてくれる、食材のECサイトであれば、その時その時の旬の野菜を届けてくれるといったサービスです。あるシャンプーのECサイトであれば、消費者が注文時に髪質や好きな香りなどをアンケートで回答すると、その消費者にマッチした処方のシャンプーやトリートメントが定期的に届くサービスがあります。このECサイトは1回のアンケートで終わりではなく、提供する商品の種類や処方をチューニングすることで顧客満足度を高めています。

こうしたキュレーション型のサブスクリプションサービスは「自分に合う商品を、プロに提案して欲しい」という消費者や、「世の中に商品が多過ぎて、自分では選べない」という消費者の利用が見込まれます。

④レンタル型

月額制で商品を貸し出し、契約期間中に商品を利用する権利を提供するサブスクリプションサービスです。アパレルや家具・家電、玩具や自転車などのサービスがあります。近年では、シェアオフィスなども普及しています。

アパレル業界では、洋服やバッグなど数点が月替わりで送られてくるサブスクリプションサービスがあります。新しい商品が届いたら、それまで借りていた商品は返送します。サービスによっては、消費者が気に入った商品を買い取ることもできます。

レンタル型のサブスクリプションは定額でさまざまな商品を試せるため、「買い物で失敗したくない」という消費者のペインを解消します。また、「高額商品を安価に使用したい」「できるだけ物を所有したくない」と考える消費者の利用も見込まれるでしょう。

サブスクリプションモデルのメリット

継続的に売上を確保できる

サブスクリプションの料金体系は一般的に定額制のため、ユーザーが解約するまで継続的に売上が発生します。ユーザー数に比例して売上が伸びていくストック型のビジネスであり、売り切り型のECサイトと比べて販売件数の波が小さく、売上高や利益を見通しやすいことが特長です。

利用データをサービス改善に活用できる

EC事業者がサブスクリプションを手がけるメリットの1つは、購買傾向や消費者の利用動向に関するデータを収集し、そのデータから消費者のニーズを読み解いて、商品やサービスの改善につなげられることです。

サブスクリプションは会員登録した顧客が、一定期間継続して利用することを前提としているため、売り切り型のECサイトよりもデータを蓄積しやすいという特長があります。例えば、ある顧客属性と相性が良い商品を特定できれば、メルマガのセグメント配信に活用することができます。併せ買いされやすい商品を特定して、ECサイトのレコメンドでクロスセルを行うことも可能でしょう。

新規顧客獲得のハードルが低い

サブスクリプションを手がけることで、新規顧客獲得の間口を広げることができます。ユーザー側は、実際に商品やサービスを利用していた期間の費用を支払うだけで商品やサービスを利用でき、不要になった時または次回の更新時に解約できるため、利用開始のハードルが低いと感じるでしょう。例えば、家具や家電を最大2年間レンタルし、気に入ったら購入できるサブスクリプションモデルのサービスも実際に提供されています。

他にも、ユーザーセレクト型のサブスクリプションでは、本製品を小分けにしたお試しセットやサンプル品を選べるようにすれば、消費者はいくつもの商品を低価格で試すことができます。使ったことがない商品をECサイトで購入することをためらう消費者でも、気になった商品を1か月ごとに試すことができれば、購入への心理的ハードルは下がります。

サブスクリプションは上述のように利用を開始しやすい一方、解約しやすいという側面があります。ユーザーにとってはメリットですが、EC事業者にとってはデメリットに感じるかもしれません。しかし、視点を変えてみると、一度解約したユーザーがまた戻ってくることもあり、買い切り型よりハードルが低いとも考えられます。解約したユーザーが、必要になったときにまた戻ってきてくれるような仕組みを作ることができるのかという点も、ビジネスの成功に影響を与えるでしょう。

企業独自のサブスクリプションの実現にはECシステムのカスタマイズが必要

サブスクリプションのECサイトは、売り切り型のECサイトとは異なる注文フォームが必要です。

キュレーション型であれば消費者の性格や体質、好みなどを把握するためのアンケートフォームなど、またユーザーセレクト型であれば、好きな商品を組み合わせてセット組みできるカート機能が欠かせません。契約期間中に商品の組み合わせを変更できるサービスであれば、消費者が商品を変更するためのマイページ機能が必要になるでしょう。

同じサブスクリプションモデルのECサイトでも、企業や商材によって細部の仕組みが異なるため、理想のサービス形態を実現するには、ECサイトをフルスクラッチで構築するか、ECシステムをカスタマイズする必要があります。

トータルECソリューション「HIT-MALL」

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「所有」から「利用」へ、消費者ニーズの変化に対応

近年、シェアリングエコノミーの概念が浸透し、物を「所有」するのではなく「利用」する消費行動も珍しくなくなりました。サブスクリプションは、そういった消費行動の変化に対応するビジネスモデルです。消費者庁が2017年に公表した「平成28年度 消費生活に関する意識調査」によると、「できるだけモノを持たない暮らしに憧れる」という考えを持つ人の割合は51.9%で半数以上を占めました[2]。できるだけ物を所有したくないと考える消費者にとって、レンタル型のサブスクリプションサービスは魅力的に映るでしょう。

商品を選びきれない消費者にも対応

EC市場規模が年間12兆円(物販EC)を越え[3]、インターネット上で膨大な数の商品が売られている現在、たくさんの商品を試しながら買い物をしたい消費者がいる一方で、商品を自分では選びきれないという消費者も出てきています。こうした二極化している消費者ニーズを満たすのが、ユーザーセレクト型やキュレーション型のサブスクリプションです。

商品・サービスを改善して顧客満足度を高める

サブスクリプションは、従来からある売り切り型のECサイトでは対応しきれない消費者ニーズをカバーするビジネスモデルです。そして、顧客との継続的なやり取りから得られたデータを分析し、消費者ニーズを吸い上げて商品やサービスを改善していくことで、顧客満足度を高めることもできます。ECサイトの重要指標であるLTV(Life Time Value、顧客1人あたりから得られる収益)を高めることにつながるでしょう。

出典