ECサイトで継続して売上を伸ばし、成長を続けていくためには、定期的な振り返りと改善をすることが重要です。
弊社では、ECサイトの新規構築やリニューアル、商品登録などのバックヤード業務からアクセス分析やプロモーションを含めた運用代行など、ECサイトに関わる幅広いサービスを展開しています。その一環として、エンドユーザーの視点からECサイトの使いやすさを診断する「ECサイト診断」というサービスを実施しており、これまで数多くのECサイトの診断を行ってきました。
ECサイトの課題と改善策は、サイトごとにさまざまですが、共通する点もあります。本記事では、弊社がこれまで実施してきた「ECサイト診断」の中でも、よく改善対象として挙がる「カテゴリ構造の改善」について解説します。
カテゴリ構造の改善は、ECサイトの改善策の中でも汎用性が高く、どの業種のサイトにもあてはまります。ぜひ、自社ECサイトと見比べながら、参考にしてみてください。
また、今回記事で紹介した内容を含む、ECサイト改善策を盛り込んだセミナーアーカイブ動画は下記ボタンからご視聴いただけます。
ECサイトのページ改善!その前に
ECサイトのページ改善にあたって、ECサイトを訪れたユーザーが購買に至るまでのプロセスと、そのプロセスにおいて離脱が起きやすいポイントを確認しましょう。
購買プロセスごとの離脱ポイントを確認
ECサイトを訪れたユーザーが購買に至るまでのプロセスを大きくまとめると、以下の4つのステップに分けられます。
- ①ランディングページ(LP)
- ②ショッピングカート
- ③決済ページ
- ④注文完了ページ
①~③の各ステップにおいて、ユーザーがページを離れて購買プロセスを中断する「離脱」の可能性として以下が考えられます。
購買プロセスに潜む「離脱ポイント」
(B)カート離脱:商品をカートに入れたものの、決済ページに行く前にページを離れる
(C)決済離脱:決済ページで情報を入力する途中でページを離れる
ECサイト改善においていずれの離脱も防ぐ必要がありますが、まず着手したいのが「(A)LP離脱」の防止です。
LP離脱が多いということは、そもそもカートや決済ページまで至るユーザーが少ないので、その状態でカート離脱や決済離脱を防ぐ施策を行ったとしても、効果が小さくなってしまいます。そのため、まずはLP離脱を防ぐ施策を行い、カートや決済ページまで至るユーザーを増やした上で、それらのページでの離脱を防ぐ施策を行ったほうが、全体の効果が高まります。
さて、LP離脱の原因の一つとして、ユーザーがECサイトを訪れたものの、「探している商品を見つけられない」ということが挙げられます。
特に、商品名を知らない状態で、検索エンジンや広告、SNSなどで興味のある情報を見つけてECサイトを訪れた新規ユーザーの場合、流入先のページで目的の情報が見つからないと、離脱してしまう可能性が高くなります。
集客施策を行い、商品に興味を持つユーザーがECサイトを訪れたものの、そのユーザーが目的の情報を見つけられずにページを離れてしまうのは大きな損失です。いくら集客施策を強化しても、LP離脱が多く起こっていると、集客施策にかけたコストや時間が無駄になってしまいます。
そういったLP離脱を防ぐためには、ECサイトのページ設計において、初めて訪れたユーザーでも目的の商品を探しやすいように導線を作る必要があります。そのために効果的な施策の一つが、カテゴリの整理です。
カテゴリの整理
ECサイトのカテゴリは、ユーザーが目的の商品にたどり着くために重要な導線です。その中でも特に「探しやすさ」を意識して整理することが大切です。ECサイトを初めて訪れたユーザーであっても、簡単に目的の商品にたどりつけるよう、検索軸の追加や紐づけの整理を行います。
ECサイトの担当者のように商品やブランド展開などサイト上に掲載している情報をよく知っている状態だと、カテゴリに多少問題があったとしても、目的の商品にたどりつけるかもしれません。そうではなく、初めてそのECサイトを訪れたユーザーの目線に立ち返って、現状のカテゴリが商品を探しやすいものであるか、見直してみましょう。
よくある課題
ECサイトのカテゴリに関してよくある課題として、カテゴリの「粒度」または「軸」が整理されていないことが考えられます。次ではよくあるカテゴリ構造を見てみましょう。
1)カテゴリの「粒度」がバラバラ
カテゴリの「粒度」とは、そのカテゴリの大きさのことです。例えば、アパレル商品を扱うECサイトの場合、以下のような分類になります。
- トップス、ボトムスなど→大カテゴリ
- Tシャツ、ブラウスなど→中カテゴリ
- 商品A、B......→小カテゴリ
カテゴリから商品を探す場合、大カテゴリ>中カテゴリ>小カテゴリという流れで商品を探すのが自然です。この粒度がバラバラだと、ユーザーが商品を探す途中で見失なってしまいがちです。
カテゴリ整理のチェックポイントの1つ目として、並列するカテゴリの「粒度」について、以下の点を確認しましょう。
カテゴリ整理のチェックポイント①
- 並列するカテゴリが同じ粒度になっているか
【NG例】大カテゴリであるトップスと、中カテゴリであるTシャツが並列になっている - カテゴリの階層が大>中>小という順番になっているか
【NG例】大カテゴリであるトップスの下に、小カテゴリの商品Aというカテゴリが存在している
2)カテゴリの「軸」が整理されていない
カテゴリの「軸」とは、大カテゴリにあたり、カテゴリの分類の基準となるものです。例えば、トップス、ボトムスといったカテゴリは「アイテム」軸での分類となります。この他に、「シーン/用途」軸、「ブランド/シリーズ」軸などがよく使われます。
「アイテム」軸はカテゴリの基本ですが、そのECサイトで扱っている商品によって、ユーザーが最も商品を探しやすいカテゴリの軸は異なります。例えば、ギフト需要の多い商品であれば「シーン/用途」軸、アパレルなど多ブランドを扱っているのであれば「ブランド/シリーズ」軸で商品を探すことができると便利です。
このようなカテゴリの軸が、商品ラインナップに合わせて整理されていないと、ユーザーはどこから商品を探せば良いのか分からなくなってしまいます。
ここで、カテゴリ整理のチェックポイントの2つ目として、カテゴリの「軸」について以下の点を確認しましょう。
カテゴリ整理のチェックポイント➁
- カテゴリに複数の軸が混在していないか
【NG例】「アイテム名」「セール商品」「人気商品A」「季節特集」など複数の軸が混在 - 商品展開に対して探しやすい軸になっているか
【NG例】ギフト需要の多い商品なのに、ギフト選びのためのカテゴリが存在しない
【NG例】製品ブランドで検索されることの多い商品だが、製品ブランドでのカテゴリ分けがない
カテゴリの軸には王道軸(基本形)があります。次の「今日から取り組める改善例」では、この王道軸を基に、自社のECサイトのカテゴリ構造を整理する方法を紹介します。
今日から取り組める改善例
ECサイトのカテゴリの王道軸(基本形)は、以下の3軸です。これらを大カテゴリとして、ユーザーが大カテゴリ>中カテゴリ>小カテゴリとたどりながら、目的の商品を探せるように、カテゴリの粒度と軸を整理します。
- 1)アイテムで選ぶ
- 2)シーン/用途で選ぶ
- 3)ブランド/シリーズで選ぶ
また、商品展開や顧客のニーズに応じて、オプション軸として「サービス(送料無料、ギフト)から選ぶ」「特集(季節、限定商品)で選ぶ」「価格帯で選ぶ」といった軸を追加するのも良いでしょう。
王道軸の中で最も基本となるのが「アイテム軸」です。ただ、アイテム軸だけでは、訪問客の検索ニーズに対応できないことがあります。
例えば「商品Aというブラウスがほしい」など、特定の商品を探す場合はアイテム軸のみでも目的の商品を探せますが、「外で遊びやすい夏物がほしい」「ブランドBの新作をチェックしたい」などの場合には、アイテム軸だけでは不十分です。
買いたい商品が明確ではない、さらには明確な目的はないが、なんとなく興味を持ってECサイトを訪れたというユーザーであっても、ほしい商品を発見しやすい導線を意識することが重要です。
ここでは、王道軸とオプション軸について、それぞれ実際のECサイトの事例を紹介しながら、どのようにカテゴリ構造を整理すると良いのか解説します。
1)アイテムで選ぶ
「アイテムで選ぶ」軸でカテゴリ構造を整理するにあたっては、まず、取り扱っている商品を整理してみましょう。その上で、商品ラインナップに対して適切なカテゴライズになっているか考えます。
商品を探しにくいカテゴリ構造は修正し、足りない検索軸の追加、余分な検索軸の統合も行います。対象商品のメーカーやブランドのサイトで、製品ラインナップを掲載している場合、そのサイトでのカテゴリ構造も参考になります。
アイテムの掲載順も重要です。メイン商材や人気商材など検索ニーズの高いアイテムはカテゴリ上部に掲載して、ユーザーがすぐに見つけられるようにしましょう。
2)シーン/用途で選ぶ
「シーン/用途で選ぶ」軸でカテゴリ構造を整理するにあたっては、まず、取り扱っている商材がどのようなシーン/用途で利用されることが多いのか考えます。ECサイトを利用するユーザー層を想定してみるのも良いでしょう。どういった年代で、どのような生活スタイルなのか、購買行動の特徴はどのようなものがあるかなど、ユーザーの「購買行動」にスポットをあてて想定すれば、どのようなシーン/用途で利用されるのか見えてきます。
また、ギフト需要が多い場合は、上記の例のように需要に応じたギフトのシーン/用途のカテゴリを作ることで、訪問客が商品を探しやすくなるでしょう。
自家需要が中心の場合も、既存顧客に商品がどのように検索されて購入に至っているのかを調べることで、シーン/用途でカテゴリの軸を作ることができるでしょう。例えば、お酒を扱っているECサイトの場合、お酒を合わせる料理のジャンルは和洋中などどういった想定ができそうか、どのようなときにお酒を飲むのかなどといったシーン/用途で軸を作ることができます。
セット販売がある場合は、シーン/用途の軸で商品を組み合わせて販売することで、アップセルやクロスセルにつながる効果もあります。
3)ブランド/シリーズで選ぶ
「ブランド/シリーズで選ぶ」軸でカテゴリ構造を整理することが有効なのは、上記の例のように多ブランドを展開するECサイトです。例えば、アパレルや化粧品を扱うECサイトでは、商品のブランド展開が豊富であることが多いので、ブランド/シリーズ軸を追加しておくと商品を探しやすくなることが多いでしょう。
カテゴリ名に商品ブランド名を活用することで、商品を探しやすくなるだけでなく、主力商品のアピールにも効果的です。
+α)オプション軸
ECサイトのカテゴリは、王道軸に加えて、商材の特性に合わせた+αの軸を加えることでより商品を探しやすくなる場合があります。ただしその際も、複数の軸が混在しないよう軸を絞り、並列するカテゴリの粒度をそろえるようにしましょう。
よくあるオプション軸の例としては、以下のようなものがあります。
- ・サービス(送料無料など)から選ぶ
- ・特集(季節、限定商品)で選ぶ
- ・価格帯で選ぶ
特集ページなどのコンテンツ作成に力を入れているECサイトの場合、「特集で選ぶ」といった軸でカテゴリを作ることが効果的です。コンセプトやストーリーが魅力的な商品は、それを紹介することで訪問客の購買意欲を高めることができます。
上記で例に挙げたアパレル商材もそうですが、商品選びで迷いやすい商材の場合、例えば、商品チャートなどの商品の選び方をサポートするコンテンツを作り、カテゴリの軸にするというのも効果的です。
紅茶を例にあげれば、「香り別に選ぶ」という軸で大カテゴリを作り、その下に「ブラックティー」「フレーバーティー」「緑茶ベース」などの中カテゴリを置くような整理の仕方が考えられます。
商材の特性に合わせてうまく使えば、アップセル・クロスセルにもつながります。
まとめ:想定ユーザーが商品を探しやすいカテゴリに
カテゴリ構造の改善をはじめとして、ECサイト改善に取り組むために押さえておきたいことがあります。それは、ECサイト改善の意義とは、「ECサイトを利用する想定ユーザーが探しやすいサイトにする」ことだということです。
カテゴリ構造の改善を行う際は、本記事で解説したポイントを押さえた上で、「想定ユーザーが探しやすい」ことを忘れないようにしてください。想定ユーザーが明確でない場合、まずはその設定から始めましょう。
想定ユーザーの設定方法や、カテゴリ以外の改善策については、セミナーアーカイブ動画にて詳しく解説していますので、そちらもぜひ参考にしてください。
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