商品やサービスを販売する際、その品質・内容・価格等の表示に関しては規制が定められています。それが景品表示法です。特にECサイトでは、景品表示法で規制されている表現が問題になることが多いため、注意が必要です。
本記事では、景品表示法の基本知識をまとめた上で、参考情報を紹介します。本記事を参考に、自社のECサイトの表示に問題がないか、新たにサイトに情報を追加する際に気を付けるべき点はどのようなことなのか、確認しましょう。
景品表示法とは
景品表示法とは、正式には「不当景品類及び不当表示防止法」(昭和37年法律第134号)という法律です。景表法とも呼ばれます。景品表示法は、一般消費者の利益の保護を目的として、以下の2点が定められています。
- ・不当表示の禁止(商品・サービスの品質・内容・価格等の表示に関する規制など)
- ・景品類の制限及び禁止(景品類の最高額の制限など)
対象はすべての事業者ですが、本記事では特に、EC事業者が注意すべき表示に関する規制を中心に記載します。
景品表示法の目的
景品表示法の目的は「一般消費者の利益の保護」です。消費者の利益が保護されていない状態では、商品・サービスを実際よりも良く見せる表示や、過大な景品付き販売による不当な顧客誘引が行なわれ、消費者は質の良くない商品やサービスを購入してしまう場合があります。
そういった消費者の不利益を防ぐために、景品表示法では商品やサービスの販売に関する「景品」と「表示」について、それぞれ規制が定められています。
景品表示法の対象
景品表示法の対象は、すべての事業者です。特に不当表示の禁止は、「商品やサービスの品質、内容、価格等」を対象としており、何らかの商品・サービスを販売している事業者であればすべて該当します。
例えば、テレビ・ウェブのCM、雑誌・新聞広告、ポスターや看板、チラシ、あるいはECサイトにおける商品説明も対象です。つまり商品・サービスを販売するための何らかのコンテンツを作る場合は、常に景品表示法の不当表示の禁止の対象となります。
景品類の制限及び禁止については、景品表示法上、景品類とみなされるものを扱う場合に対象となります。
景品類の制限及び禁止
景品表示法では、景品類の最高額、総額等が規制されています。景品表示法上は、以下を満たすものが「景品類」とされます。
- [目的]顧客を誘引するための手段として
- [提供方法]取引に付随して提供する
- [内容]物品、金銭など、経済上の利益
景品表示法の景品規制では、景品類を「一般懸賞」「共同懸賞」「総付景品」に分け、それぞれの限度額等を定めています。なお、懸賞とは、商品・サービスの利用者に対して、くじ等の偶然性、特定厚意の優劣等によって景品類を提供するもので、それ以外の景品類が「総付景品」となります。
不当表示の禁止
景品表示法の表示規制では、消費者に誤認される「不当な表示」であるとして、以下の表示が禁止されています。
- ・優良誤認表示(5条1号)
- ・有利誤認表示(5条2号)
- ・商品・サービスの取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがあると認められ内閣総理大臣が指定する表示(5条3号)
優良誤認表示
優良誤認表示とは、以下のような、商品・サービスの品質、規格その他の内容についての不当表示です。
優良誤認表示
1.内容について、実際のものよりも著しく優良であると一般消費者に示す表示
2.内容について、事実に相違して競争業者に係るものよりも著しく優良であると一般消費者に示す表示
有利誤認表示
有利誤認とは、以下のような、商品・サービスの価格やその他取引条件についての不当表示です。
有利誤認表示
1.取引条件について、実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示
2.取引条件について、競争業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示
その他の表示
「優良誤認表示」「有利誤認表示」以外にも、商品・サービスの取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがあると認められ内閣総理大臣が指定する表示(5条3号)として、以下6つが告示されています。
- 1.無果汁の清涼飲料水等についての表示
- 2.商品の原産国に関する不当な表示
- 3.消費者信用の融資費用に関する不当な表示
- 4.不動産のおとり広告に関する表示
- 5.おとり広告に関する表示
- 6.有料老人ホームに関する不当な表示
その他、どのような表示が不当な表示に当たるかどうかは、消費者庁HPで公開されている資料「事例でわかる景品表示法」も参考にしましょう。
景品表示法に違反するとどうなるのか
景品表示法への違反の疑いがある場合、消費者庁が調査を行います。そのなかで、対象の事業者への事情聴取が行なわれる場合もあります。
違反行為だと判断された場合、以下を命ずる「措置命令」が行なわれます。なお、消費者庁だけでなく都道府県でも景品表示法を運用しており、都道府県知事も措置命令を出すことができます。
- ・不当表示により一般消費者に与えた誤認の排除
- ・再発防止策の実施
- ・今後同様の違反行為を行わないこと
また、要件を満たす違反行為については、課徴金の納付が命じられることもあります。具体的にどういった表示が違反に当たるかどうかは、消費者庁HPで公開されている「景品表示法における違反事例集」も参考にしましょう。
広告表現で注意すべきポイント
ECサイトにおける広告表現は、特に注意が必要です。消費者庁サイトの「インターネット上の広告表示」において、この点について詳しく解説されています。
ECサイトにおける広告表示
ECサイトにおいては、以下のように、消費者の情報源に制限がある一方で、事業者はその情報を簡単に変更できるという非対称性があります。
- 消費者:Webサイト上の表示が商品・サービスの内容、取引条件等の唯一の情報源である
- 事業者:商品・サービスの内容、取引条件等のWebサイト上の表示内容を簡単に変更できる
特にECサイトには以下のような特徴があり、取得できる情報が限られている消費者が、その情報もすべて確認しないまま契約申込をしてしまうという状況が起きやすくなってしまいます。
契約が容易
Webサイト上の指示に従ってクリックするだけで契約が成立するなど、消費者が契約内容を十分に理解していなくても、簡単に契約申込に至ってしまうことがあります。
表示範囲の制限
Webサイトには多くの情報を掲載できますが、閲覧側の画面の制約があり、スクロールしないと表示内容全体が見られない場合が多くなります。そのため、表示内容をすべて確認せずに契約申込を行うことにつながるため、注意が必要です。
ハイパーリンクの使用
ひとつの画面にすべての情報を掲載すると読みにくい場合などに、ハイパーリンクを使用すれば、詳細情報をまとめた別ページにワンクリックで遷移させることができます。しかし、重要な情報を記載したページへのリンクを意図的に小さくするなど、悪質な事業者による問題も発生しやすいです。
以上の状況を踏まえ、2002年6月5日、公正取引委員会より「消費者向け電子商取引における表示についての景品表示法上の問題点と留意事項」が発表されました。これは、消費者取引の適正化を図る観点から、BtoC取引における表示について景品表示法上の問題点を整理し、事業者に求められる表示上の留意点を取りまとめたものです。
「消費者向け電子商取引における表示についての景品表示法上の問題点と留意事項」のポイント
EC事業者のうち、物販事業者や何らかのサービスを提供する事業者が注意すべき点が、ポイントの1つ目として「1 インターネットを利用して行われる商品・サービスの取引における表示」にまとめられています。まず、商品・サービスの内容又は取引条件に係る表示について、次の内容に留意しましょう。
商品・サービスの効果・性能を標ぼうする場合には、十分な根拠なくして効果・性能があるかのように一般消費者に誤認される表示をしてはいけません。また、販売価格、送料、返品の可否・条件等の取引条件については、その具体的内容を正確かつ明瞭に表示する必要があります。
また、表示の内容に加え、「ハイパーリンクの文字列」と「情報の更新日」の2点について、表示方法に関する留意事項があります。
ハイパーリンクの文字列
リンク先に表示されているものを、明確かつ具体的に表示しましょう。また、消費者が見落とさないよう、文字の大きさ・配色などが見やすいよう配慮した上で、関連情報の近くに配置します。
情報の更新日
表示内容に変更がある場合、都度、最新の更新時点及び変更箇所を正確かつ明瞭に表示します。以下のページに、表示に関する細かい具体例が紹介されているのであわせて確認してください。
なお、「インターネット上でソフトウェアの販売などを行う情報提供サービス」については「インターネット上の広告表示」のポイント2で、「DSLやケーブルインターネット等のブロードバンド通信を可能とするインターネット接続サービス」についてはポイント3で注意点がまとめられています。
景品表示法の確認はECサイトに必須
景品表示法は、ECサイトを運営するにあたり、必ずおさえておくべき知識です。本記事では、参考となる消費者庁のサイト情報や資料も紹介しているので、自社のECサイトをチェックする際やコンテンツの作成・更新時にぜひ参照してください。
EC事業に参入する事業者、ECサイトを利用する消費者が増えるにつれ、ECサイトにおける表示のトラブルも増えており、消費者庁の取り組みは厳しくなる傾向にあります。早めに対策を行いましょう。
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