RFP(提案依頼書)とは?ECならではの記載項目と検討ポイント

RFP(提案依頼書)とは?ECならではの記載項目と検討ポイント

自社ECサイトを新たに立ち上げる際や、ECシステムをリプレイスするときに、どのような判断基準でシステムやサイト構築を行う会社(ベンダー)を選べば良いか迷うこともあるのではないでしょうか?

そこで今回は、自社ECサイトを構築するときによくある失敗を踏まえ、自社に合ったベンダーを選ぶための「RFP(提案依頼書)」の作り方とチェックポイントを解説します。

また、実際にリプレイスを検討されているのであれば、全体の流れや注意点について「失敗しないECサイトリプレイス - システム選定前に確認したい4つのステップ」で解説していますので、参考になさってください。

RFPとは

RFPとは、Request for Proposalの頭文字を取ったものです。ECサイトの立ち上げやリニューアル・リプレイスのプロジェクトを実施するにあたっての目的や必要とする機能要件、予算、スケジュールなどを記載した文書を指します。

作成したRFPを候補となるベンダーに渡し、各社からの提案書や見積、プレゼンテーション、担当者の対応などを総合的に比較検討し、どこに発注するかを決定します。そのため、良いRFPを作成することがプロジェクト成功の第一歩と言えるでしょう。

ベンダー選びで失敗しないためにはRFPを不備のないように作成することが重要です。

「ECサイト構築の経験がなく、RFPの作り方が分からなかった」「システムの機能一覧を見て、使いたい機能はすべて実装されていると思い込んでしまった」「ベンダーの営業担当者の説明を鵜呑みにして契約してしまった」

こういった理由でRFPを作成しない、もしくは十分に精査できていないRFPをもとに安易にベンダーを選ぶのは失敗のもと。売れるECサイトを構築するには、目的を明確にし、実現したいことや必要な機能の優先順位を整理した上で、ベンダーを吟味することが大切です。

実現したいECサイトを明確にしてからRFPを作成する

ECサイト構築の自由度が高いECパッケージやオープンソース、フルスクラッチなどで構築する場合、まずはRFPを作成し、ECサイトの提案と見積をベンダーに依頼します。

RFPにはプロジェクトの全体像や目的、必要な機能、予算、スケジュール、連携したい外部システムやツールなどを記載します。

RFPを作成する上で特に重要なのは、「どのようなECサイトを作りたいか」を自社の中で明確にすること。次の3つの項目は必ず整理してください。

RFP作成において整理すべき3項目

  1. ECサイトのコンセプトや「~年目までに売上○円、会員数○件」などの達成目標(ゴール)
  2. 自分たちがやりたいことを実現するために必要な機能(機能要件)
  3. 開発体制やサポート体制、セキュリティなど、機能以外にベンダーに求めるもの(非機能要件)

これらが曖昧なRFPでは、ベンダーから提示される見積も不正確なものになります。そして、ベンダーと契約して要件定義に進んだ段階で、追加の開発が必要なことが判明し、開発費用が当初の見積を大幅に超えてしまうという失敗も決して珍しくはありません。

こうした失敗を防ぐためにも、ベンダーに問い合わせる前に「ECサイトのコンセプト・ゴール」「機能要件」「非機能要件」を必ず社内で整理しておきましょう。

プロジェクトの作業スコープを図式化し全体像を把握する

RFPを作る際は、まずプロジェクトの範囲(スコープ)を図式化します。ここで全体像を把握しておくことで、プロジェクト開始後の機能追加や追加費用の発生を防ぐことができます。開発するシステムの範囲、必要な機能、基幹システム・決済代行システム・物流システムとの連携、BI・MA・レコメンドなどの外部ツールとの連携など、プロジェクトの全体像を漏れなく記載してください。

プロジェクト範囲 スコープ図

プロジェクト範囲 スコープ図

すぐ必要な機能と将来必要な機能を整理する

ECサイトに実装したい機能(機能要件)をリストアップするときは「すぐに必要な機能」と「将来的に実装したい機能」の2種類に分けると、機能の優先順位が明確になります。

1.実装したい機能の優先順位を明確にする

EC事業に対するモチベーションが高いEC事業者ほど、実装したい機能がたくさんあるでしょう。しかし、予算や開発期間が限られているプロジェクトでは、すべての機能を実装できるとは限りません。

機能の優先順位を決めておくことで、必要性の高い機能はECサイトのオープン時点で実装、優先度の低い機能はあらためて開発予算を確保して実装するなどの長期的な開発計画を立てやすくなります。一度の開発ですべての機能を実装できないのであれば、将来的な開発計画を見据えてRFPを作成すると、必要性の高い機能と開発予算のバランスが取れたECサイトを実現しやすくなります。

2.既存の機能やサービスの廃止も検討する

すでに稼働中のECシステムがある場合は、既存のECサイトに備わっている機能をリストアップした上で、それらはリプレイス後も必要なのか、廃止してもかまわないのかを精査してください。

3.将来の構想に合わせたシームレスなサービス拡張が可能かを検討する

将来的に実装したい機能や取り組みたいサービスを明確にしておくと、将来のサービス拡張や事業拡大にかかるコストを減らせるメリットもあります。

例えば、将来の構想として「実店舗とECサイトを連携してオムニチャネルを実現したい」「運営中の既存のECサイトと顧客情報を連携させたギフト専用のECサイトを作りたい」「複数のショップを出店してモール化したい」といった計画があるなら、それらを実現できる拡張性の高いシステムを最初から導入しておけば、将来はリプレイスすることなく新しいサービスや事業を始めることができます。

システムのリプレイスには多くの費用と手間がかかるので、先々まで見越して必要な機能を整理しておきましょう。

ECサイトの機能拡張やカスタマイズの必要性を検討する

ECサイトは「構築したら終わり」ではありません。リリース後もシステム改修や外部ツールとの連携を行い、機能を拡張するのが一般的です。

ECサイトを運営していると、やりたいことや必要な機能は次々と出てくるものです。ECの売上規模によって必要な機能は異なりますし、商品カテゴリを追加したり、新しい売り方を始める際にシステムのカスタマイズが必要になるかもしれません。

また、ECの集客手法やマーケティングなどの技術は日進月歩で、消費者が使うSNSなどのサービスも時代とともに変わります。こうしたトレンドの変化に対応するには、ECシステムの機能拡張やカスタマイズも必要でしょう。

EC事業の成長フェーズやトレンドに合わせて機能を追加・拡張したいのであれば、カスタマイズが可能なECシステムを最初から選んでおくと、後々になってシステムをリプレイスするコストと手間を省くことができます。

ベンダーを選ぶ前に、将来的にカスタマイズが必要になりそうかを検討し、もし必要になりそうなら「機能の拡張性」や「カスタマイズの自由度」といった判断軸をベンダー選びの基準に加えてください。

MAやBIなど使いたい外部ツールをリストアップ

マーケティング・オートメーション(MA)やビジネス・インテリジェンス(BI)などの外部ツールをECサイトに導入しているケースがほとんどでしょう。

外部ツールを導入するには、ECサイトの受注データや顧客データなどをツールと連携させる必要があります。どのデータを使い、どういった連携を想定するかによってECサイト構築の見積も変わってくるため、使いたい外部ツールは漏れなくRFPに記載してください。

ECサイトの運用に必要なサーバ環境の確認

ECサイトを稼働させるためのサーバの運用管理をどこが行うかも重要です。ベンダーに任せるのか、自社のサーバを使うのか、あるいはAWSのようなパブリッククラウドを使うのか、事前に情報システム部門への相談も必要になってくるでしょう。

ベンダーによってはサーバが指定されることもありますし、逆に柔軟に対応してくれるベンダーもいます。

EC事業者が基幹システムなどで使っているサーバがあり、ECシステムも共通のサーバを使いたいといった要望がある場合には、サーバ環境を自社の要件に合わせて構築できるかベンダーに確認しましょう。

ECサイトの運営業務を委託するか検討する

ECシステムのベンダーの中には、ECサイトの受注管理やコンテンツ制作、顧客対応、商品登録といった運用業務を代行してくれる会社もあります。社内のリソース不足など運用業務のアウトソーシングを検討している場合は、その旨もRFPに記載すると良いでしょう。

業務設計に不安があればベンダーに協力を依頼する

ECシステムをリプレイスすると、ECサイトの商品登録や問い合わせ対応といった運用業務のフローが変わることも少なくありません。

誰が、どの業務を、どのように進めていくかを決定する「業務設計」は、原則としてEC事業者が行います。ただ、システムの操作マニュアルを作ったベンダーにも業務設計に協力してもらうことで、ECサイトの運営業務を効率化できることもあります。

ECシステムのリプレイスが初めてだと、業務設計の進め方に不安があるかもしれません。また、移行先のECシステムの細かい仕様を理解できず、業務設計に漏れがないか心配な場合もあるでしょう。

業務設計を社内だけで行うことに不安がある場合には、業務設計をベンダーにも協力して欲しいという要望をRFPに盛込みましょう。

RFP作成のまとめ

ECサイトを構築する目的やゴールを明確にし、やりたいことや、必要な機能の優先順位を整理することで見積の精度が高まり、開発コストの追加やスケジュールの延期が少なくなります。

RFP作成の目次例

  • ▼プロジェクト概要
    • ├背景と目的
    • ├目標売上
    • ├予算
    • ├スケジュール
    • └スコープ
      • ├機能要件
      • ├非機能要件
      • ├連携ツール
      • └データ移行
      •    
  • ▼提案依頼事項
    • ├成果物
    • ├開発環境
    • ├運用保守体制
    • └教育体制

RFPとベンダー比較表を活用して納得のいくベンダー選びを

今回は「提案依頼書(RFP)」作成のポイントについて解説しました。

近年、さまざまなECシステムが登場し、情報も氾濫しています。表面的な情報や評判だけでなく、自社にとって本当に必要なシステムを冷静に判断することが大切です。満足のいくECサイト構築のために、この記事で解説したRFPの作り方のポイントを参考にしてみてください。

【資料】システムベンダー選びで失敗しないためのチェックリスト

システムベンダー選びで失敗しないためのチェックリスト

ECシステムとシステムベンダーを選ぶ際のチェックポイントをまとめたチェックリストのサンプルを作成しました。構築に関する点はもちろん、ECリニューアルの場合にはデータ移行への対応力なども確認しておきたいポイントです。ぜひダウンロードしてご活用ください。