トレンドの変化が早い現在のEC市場において、消費者から選ばれるネットショップであり続けるには、定期的にECサイトをリニューアルすることが必要です。
ECサイトをリニューアルする際、ECシステムのリプレイス（移行）を検討するケースも多いのではないでしょうか。
既存のECサイトが抱える課題を抜本的に解決するには、システムのリプレイスは効果的です。ただし、リプレイスの目的や自社のビジネスモデルに合致したシステムを選ばないと、リプレイスの効果が出ないばかりか、運用が上手くいかず、かえって売上を落とすことになりかねません。
そこで今回は、ECシステムのリプレイスを成功させるために確認しておくべき項目と、システムベンダー選びのチェックポイントを解説します。
ECシステムをリプレイスするタイミングは？
EC事業を運用していると、日々さまざまな課題に直面すると思います。そういった課題の中には、ECシステムをリプレイスしないと抜本的に解決できないものも少なくありません。
例えば、次のような課題を抱えているEC事業者さまは、システムのリプレイスを検討するタイミングです。
ECシステムのリプレイスを検討するタイミング
- 新しいサービスを始めたいが、既存のシステムでは実現できない
- 売上を伸ばすための機能を追加したいが、既存のシステムはカスタマイズできない
- EC事業の売上が増えたことで、既存のシステムのスペックに不満を感じている
- 管理画面の使い勝手が悪く、EC事業の運用に支障が出ている
- システムのセキュリティに不安がある
- 理想のユーザーインターフェースやデザインを実現したい
- オムニチャネルを実現したい（ECと実店舗を連携したい）
システム選定前に必ずやっておくべき4つのステップ
ECシステムをリプレイスすると決めたら、システムベンダーに問い合わせる前に、目的や予算などを社内で整理しておくことが大切です。
次の4つのステップを実施しておくことで、システムを選ぶ際の基準が明確になりますし、開発における要件定義もスムーズに進みやすくなります。
システムベンダー選定前に行っておくと良い4つのステップ
- ①リプレイスの目的を明確化する
- ②実装したい機能や、実現したいサービスを洗い出す
- ③予算と開発スケジュール（リニューアルオープンの時期）を設定する
- ④主なECシステムをリストアップし、条件に合った製品をピックアップする
ステップ1 リプレイスの目的を明確化する
ECシステムをリプレイスする際、リプレイスの目的が定まっていないと、どのシステムを選べば良いか判断できません。
システムベンダーに問い合わせや見積を依頼する前に、「なぜリプレイスするのか」や「どのようなECサイトを作りたいのか」「現状のECサイトの課題」をしっかり整理してください。
「売上を伸ばしたい」「オムニチャネルを実現したい」「セキュリティを強化したい」など、リプレイスの目的を明確化しておくことが重要です。
ステップ2 実装したい機能や、実現したいサービスを洗い出す
リプレイスの目的が明確になったら、その目的を達成するために必要な機能や、実現したいサービスを洗い出します。
例えば、リプレイスの目的が「売上を伸ばしたい」ということであれば、「ECサイトのアクセス数を増やす」「新規顧客を増やす」「転換率を上げる」「客単価を上げる」「リピーターを増やす」といった取り組みが必要です。このように「売上を伸ばす」という目的達成のために必要な取り組みを具体化し、列挙しておきます。
ここで「売上を20％伸ばしたい」など、具体的な数字目標を入れることにより取り組みやシステムに求める機能が明らかになってくるので、できるだけ詳細に落とし込むことがポイントです。
こうした取り組みを実現するためのECシステムに求める機能やスペックの優先順位が明確になり、システム選びの判断基準を決めることができます。また、システム開発における要件定義にも役立つでしょう。
リプレイスの目的と必要な取り組みの表例
| リプレイスの目的 | 目的達成のために必要なこと |
|---|---|
| 売上を伸ばしたい | ECサイトのアクセス数を増やす／新規顧客を増やす／客単価を上げる／リピーターを増やす／転換率を上げる |
| セキュリティを強化したい | 脆弱性のないソフトウェアを使う／堅牢なサーバを使う／ネットワーク監視を行う |
| オムニチャネルを実現したい | ECと実店舗の顧客情報を統合する／ POSとECを連携する／在庫データを統合する／共通ポイントプログラムを設ける |
ステップ3 予算と開発スケジュール（リニューアルオープンの時期）を設定する
ECシステムをリプレイスする際の予算枠や、リニューアルオープンの時期は、システムを選ぶ際の重要な判断基準になります。必ず社内のコンセンサスを取り、目的や課題解決に必要な予算とスケジュールを確保しておきましょう。
ECシステムをリプレイスする初期費用は、ASPショッピングカートは数万〜数十万円、ECパッケージシステムは数百万〜数千万円、フルスクラッチは数千万〜数億円が目安です。
リプレイスにかかる期間は、ECサイトの機能やデータベースの規模などによりますが、ASPショッピングカートなら3カ月以内、ECパッケージシステムやオープンソースは3～12カ月、フルスクラッチは1年以上が目安になるでしょう。
システムベンダー選びに必要な「RFP」を作成する
システムベンダー選びの際には、ステップ1～2で実施したECサイトのリプレイスの目的を明確にし、実現したい機能や必要な機能の優先順位を整理した上で、ベンダーを吟味することが大切です。
システム投資はある程度まとまった金額が発生することが多く、価値のある提案を受けるためには、EC事業者側がシステムに必要な要件や実現したい業務などをまとめた「提案依頼書（RFP）」の作成が欠かせません。
RFPがあることで、複数のベンダーに提案を依頼する際でもそれぞれがシステム要件を独自解釈する恐れが少なく、提案内容と今回のリプレイスで実現したいことの間でブレが生じたり、見積が提案時と要件定義時で大きく異なる状況を防げます。
RFPは慣れた人でも完璧なものを作成することは難しいものです。ベンダーから良い提案をしてもらい、システム開発に向けて不足している部分を追加していく基となる資料として、提案に役立ちそうな情報をまとめていきましょう。
詳しいRFPの作り方に関しては、下記の記事を参考になさってください。
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ステップ4 主なECシステムをリストアップし、目的に合った製品をピックアップする
リプレイスの目的や実装したい機能、予算、開発スケジュールを整理し、RFPを作成したらいよいよ候補となるECシステムの選定に入ります。
現在、さまざまなECシステムがあり、機能やスペック、価格、カスタマイズの自由度などは製品ごとに特色があります。
ECシステムのタイプ（ASP、クラウド、オープンソース、パッケージ、フルスクラッチ）ごとの特徴や、選び方については、下記の記事も参考になさってください。
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目星がついてきたら、ECシステムを提供しているベンダーに資料請求を行ったり、RFI（Request for Information）をベンダーに渡し、回答を見て情報を吟味しましょう。
RFIとは日本語で「情報提供依頼書」と訳されます。この書類はベンダー側の会社情報や実績、サービスの概算費用、特長といった情報を開示してもらい、先ほど出てきたRFPを送付する候補を見つけておくために作成します。
基本的にRFIでは細かく要求を提示することはないですが、必須機能やスケジュールなど、選定の前提条件になるものがあれば記載しましょう。情報収集段階であることを前提に、細かすぎる指示を控え、負荷にならない程度の分量が好ましいです。ベンダーの回答期限は1週間から2週間程度が目安です。
また、RFIを提出する際に、EC事業者の事業概要や会社規模といった自社情報の他にもリニューアルの目的や目標、背景を開示すると、ベンダー側も意図を汲み取った回答をしやすくなり、比較検討を行いやすくなります。
資料請求やRFIの回答を基に、要件に合わないものを除いて数社程度に絞り込んだ段階でRFPを提出して提案を依頼しましょう。
ECリプレイス成功に向けたポイント
この先のステップはベンダー選定を行い、要件定義やシステム開発、デザインを含めたサイト構築、これまでのシステムとは変更になった部分の業務設計などを行います。その中での注意点をご説明します。
十分な要件定義を行ってくれるベンダーを選ぶ
ECパッケージやフルスクラッチでECサイトを構築する場合、作成したRFPを基に十分な要件定義を行ってくれるシステムベンダーを選ぶことも重要です。
リニューアルオープン後の運用を想定し、要件定義をしっかり行っておけば、開発がスムーズに進むのはもちろんのこと、不必要な機能開発を回避できるため費用対効果の高いECサイトが完成します。
契約前にソリューション提案を行ってくれて、契約後も手厚くサポートしてくれるシステムベンダーは、提案時の金額が他社と比べて多少高いかもしれません。しかし、長期的に見ればメリットが多いはずです。
逆に、サポート体制が弱いシステムベンダーに依頼してしまうと、システムを導入してから運用に支障をきたしたとき、十分に対応してもらえないリスクがあります。その結果、運用を改善するためにツールを導入したり、運用代行会社と契約したりせざるを得なくなり、コストが高くついてしまったというケースも少なくありません。
ECシステムを選ぶ際は、「十分な要件定義を行ってくれるか」「アフターメンテナンスの体制があるか」といった、製品パンフレットや価格表だけでは分からない付加価値を考慮することも、リプレイスを成功させるポイントと言えるでしょう。
「ベンダー比較表」を作成し、選定基準を明らかにする
複数のベンダーに提案を依頼する場合は、どのような基準で選ぶかを明確にした「ベンダー比較表」を作成すると良いでしょう。これにより、社内認識が統一できスムーズにプロジェクトを進めることができます。
ベンダーは、要件定義から開発だけではなく、EC運用開始後もパートナーとなる存在です。そのため、機能面での比較だけではなく、対応力や信頼性も重要な確認ポイントです。
ベンダー比較表の作り方は、下記の記事を参考になさってください。
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データ移行
ECシステムをリプレイスする際のハードルの1つは、それまでに蓄積してきた受注データや会員データなどを、新しいECシステムに移行する作業です。
データの移行作業を自分たちで行うと、作業の負担が重いうえ、データ消失などの事故につながりかねません。データの移行作業をサポートしてくれるシステムベンダーを選ぶことも、システム選びのポイントの1つになるでしょう。
データ移行の詳細は、下記の記事をご覧ください。
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今回はECのリプレイスについて解説しました。もし、現在リプレイスをお考え中で「進め方が分からない」「リプレイスの相談に乗ってほしい」などお悩みやご希望ございましたら、お気軽に下記フォームからお問い合わせください。
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