百貨店の店舗とECの会員情報統合で売上アップ
地域密着で宮城・東北の魅力を伝えたい「FUJISAKI online」
EC市場の拡大や非対面販売の需要の高まりを受け、実店舗を持つ業態でもECサイトに注力する事例が増えている。宮城・東北各地区における地域密着型の百貨店として、独自の商品を多く展開する株式会社藤崎では、ECサイト「FUJISAKI online」を運営している。
FUJISAKI onlineは、アイテック阪急阪神株式会社のEC構築・運用サービス「HIT-MALL(ヒットモール)」導入により2021年10月にリニューアルオープンした。リニューアルでは、複数の販売チャネルにおける会員情報の統合や、ECサイトでも対面販売と同様に商品の魅力を伝えられるような世界観の統一を実現した。リニューアルに至るまでの経緯や重視した点などを、株式会社藤崎 経営企画部 システム企画担当 担当課長 佐々木 則和様、マーケティング統括部 営業企画担当 専任課長 高橋 伸介様に伺った。
企業名 | 株式会社藤崎様 |
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サイト名 | FUJISAKI online |
URL | https://fujisaki-online.jp/ |
提供サービス |
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ECの需要が高まるなか、コロナ禍において対応が急務に
--株式会社藤崎は、宮城県仙台市に本店を置き、東北各地区に18のサテライト店を展開する百貨店事業を行っている。創業は1819年(文政2年)、創業約200年という歴史を持ち、そのなかでも重視してきたことは、地域の人々とのつながりで、経営理念として掲げる「地域発展主義」「顧客第一主義」「創意実行主義」にも表れている。
佐々木様:
我々は「地方百貨店」として、地元企業や大学と連携した商品開発や、地域と連動した社会貢献に積極的に取り組んできました。また、創業200周年事業においては、2011年の東日本大震災で被害を受けた仙台市の沿岸エリアへの植樹を行いました。地域の方々とのつながりを重視しながら、社員が自分の成長を感じ、活き活きと働ける場を、地域のお客様やお取引先様も含めつくり上げていくことが、弊社が目指すところです。
--HIT-MALL導入によりECサイト「FUJISAKI online」がオープンしたのは2021年10月。もともとお中元やお歳暮などギフト商材を中心に扱うECサイトを20年ほど前から運営しており、このサイトをリニューアルした形となる。
高橋様:
2020年3月、弊社の第13期中期経営計画に基づき、本店・サテライト店・外商・ECという4つのチャネルのシームレス化を目的として、オムニチャネル推進プロジェクトが発足しました。そのなかで、非対面での購入への需要の高まりを受け、ECサイトを拡大する計画がありました。
この計画が加速したのは、新型コロナウイルス感染拡大により、お客様の実店舗への来店機会が急激に減少したことも大きく影響しています。2020年11月に新たなECサイト構築プロジェクトが立ち上がり、要件定義と開発を進め、2021年10月にオープンしました。現在、専任バイヤーを含め7名体制で運用しています。
各チャネルの会員情報を統合して顧客の利便性を向上
--リニューアル前のECサイトで大きな課題となっていたのが、会員情報の統合だった。
高橋様:
弊社には、宮城県を中心に東北一円にハウスカード会員様がいらっしゃいます。しかし、それらの会員情報が実店舗とECサイト間で統合されておらず、実店舗に来店されたお客様のECサイトへの送客やECサイトの会員の方に向けた実店舗への来店促進が進まない状況でした。
--課題はそれだけではなかった。20年ほど前からECサイトを運営するなかで、適宜改修は行っていたものの、インフラを含めたECシステムが古いことや、デザイン・使い勝手などにも課題を感じていた。
高橋様:
リニューアル前のECサイトの仕組みでは、アクセス解析ツールの導入や発送完了メールの自動送信ができないなど、改修だけでは対応できないさまざまな課題がありました。こういった点は、カスタマーサポートの対応スピードにも影響を及ぼしていました。
また、弊社は実店舗で商品の魅力を伝えることには慣れている一方で、ECサイトの運用ノウハウは、持っていませんでした。ECサイトでは、商品の見せ方やデザイン、および購入しやすい注文フローなど、ECサイトならではの工夫が必要です。百貨店のお客様には年配の方も多く、その点も考慮する必要がありました。
百貨店ならではの運用に対応できるのがHIT-MALLの強み
--さまざまな課題を解決すべく、ECサイトのリニューアルを検討するなかで、HIT-MALLを選ぶ決め手となったのが、「百貨店に関する実績や知見が豊富だったこと」だという。
高橋様:
アイテック阪急阪神さんは、百貨店のECサイト導入実績が豊富であり、百貨店特有の細かな要件にも親身にご対応いただけました。要件定義から開発、デザインに至るまで、課題と対処方法について、事例を交えながらご提案いただけたことも選定理由の一つです。
佐々木様:
百貨店には独特の運用があります。たとえば、「友の会」という会員組織や「外商」という販売方法など。そういった運用にも精通しており、ECサイトへの実装ノウハウもあり、導入時の注意点などを教えていただけたのは選定理由として大きかったです。
高橋様:
また、「FUJISAKI online」のリニューアル以前、2019年5月にコスメ専用の「FUJISAKI COSME ONLINE」というECサイトを立ち上げているのですが、このときもアイテック阪急阪神さんにお任せしており、SEの技術力やデザイン力について信頼がありました。
コロナ禍における苦労と、商品の魅力を伝えるための工夫
--約20年ぶりの刷新、一から作り直す難しさがあった。
高橋様:
約20年ぶりのECサイト刷新ということで、一からすべてを作り直す必要があり、苦労した点が多々ありました。リニューアル前のECサイトでの商品の取り扱いは年間2,000点程度でしたが、リニューアル後は4,000~5,000点になり、商品データの準備や登録も苦労した点のひとつです。
また、新型コロナウイルス感染拡大により緊急事態宣言の発令と打ち合わせ期間が重なり、要件定義のフェーズなど初期のタイミングにおいて、対面でのミーティングができない苦労も大きかったです。
佐々木様:
特に齟齬があってはならないシステムやデザインの部分で、緊急事態宣言発令中もオンラインミーティングを行うなど、打ち合わせの回数を重ねながら綿密に進めていきました。
--リニューアルにあたり重視したのが、商品の魅力を伝えるという部分だという。
高橋様:
百貨店の強みは魅力的な商品の品揃えと商品知識の豊富さだと考えています。弊社では、宮城・東北の地場商材など、差別化できるオリジナル商品を多く取り扱っています。そういった地域の魅力を表現するカテゴリとしての打ち出し方や、生産者やバイヤーの顔も見せながら、商品の背景を伝えられるサイト作りを重視しました。アイテック阪急阪神さんのノウハウも共有いただきながら、商品の良さが伝えられるデザインになっていると思います。
前年比大幅増の売上にも表れている顧客からの高評価
--システム面はデータ統合・連携による効率化を実現。サイトの操作性、デザイン面はリニューアル後のユーザーアンケートで高評価。
高橋様:
今回のリニューアルでは、会員情報の統合および、実店舗とECサイトの受注データ連携の仕組みも実現しました。それによりハウスカード会員と実店舗、ECサイトの会員属性や購入履歴を活用した販促施策を実施できるようになりました。また、受注データの自動連携により日々の受注処理の負担が半減しました。
さらに、フォームからの問い合わせと注文データの紐付けができる仕組みになっており、カスタマーサポートの対応が非常にスピーディーになりました。
サイトオープン後にアンケートを実施したところ、ECサイトのデザインと操作性について高い評価をいただきました。リニューアルによって、運用側の負担軽減だけでなく、ECサイトの利用者側のユーザビリティの向上にもつながりました。
--EC化率や売上などの数字にも良い影響が見られた。
佐々木様:
リニューアル前のサイトの会員だったお客様も、順調に移行が進んでいます。一回の案内ではすぐに移行につながらないので、例えばおせちを予約する時期など、お客様の購買タイミングに合わせてインセンティブもつけながら、こまめにご案内しています。
高橋様:
リニューアル後、2021年の年末商戦は受注件数・売上高ともに前年対比で大きく拡大しました。おせちの売上は前年比140%、クリスマスケーキが180%でした。
佐々木様:
お歳暮やおせち、クリスマスケーキなどで、EC化率が上がっています。2021年はコロナ禍の影響もあって需要が高く、特にクリスマスケーキはECサイトからの注文が過半数を占めるほどになりました。
--順調な滑り出しとなっている、FUJISAKI online。今後の展望としては、顧客が実店舗とECサイトをよりシームレスに利用できる体制を整え、地域に貢献していきたいという。
高橋様:
実店舗とECサイトを両方利用されるお客様を、弊社では「デジタルカスタマー」と定義しています。デジタルカスタマーは購買意欲が高い傾向にあり、実店舗のみ、ECのみのように単一のチャネルのみを利用するお客様に比べ年間お買い上げ額が1.8倍になっています。
ECサイトのリニューアルにより、品揃えの充実だけでなく、実店舗とECサイトを横断してポイントを利用できるなど、デジタルカスタマーにとっての利便性も向上しました。今後は、友の会お買い物カードの利用や、サテライト店での商品受け取り、外商の掛売決済など、より一層、お客様に応じた利便性を提供する取り組みを検討しています。
そして、ECサイトを活用した広域なお客様へのアプローチだけでなく、宮城・東北一円に会員を持つ我々の強みを活かした藤崎流のオムニチャネルを、アイテック阪急阪神さんと協業して推進していきたいです。
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