EC事業者向けMA(マーケティングオートメーション)ツールとメール配信ツールの違いと活用法

EC事業者向けMA(マーケティングオートメーション)ツールとメール配信ツールの違いと活用法

この記事では、メール配信ツール「Cuenote FC」を提供するユミルリンク株式会社にMA(マーケティングオートメーション)ツールとメール配信ツールの違いと活用法について解説いただきました。

外出を控え自宅で過ごす時間が増える中、EC(電子商取引)サイトを通じた買い物の需要が増えています。オフラインでの接点が少なくなったことで、EC事業者にとって悩みどころなのは「消費者のインサイト(深層心理)をいかに正確に掴むか」ではないでしょうか。そのような流れもあり、オンラインでの購買行動や興味・関心度合いをマーケティング施策に活かすべく、MA(マーケティングオートメーション)ツールやメール配信ツールを活用した顧客育成に取り組まれているEC事業者も多くなりました。

MAツールとメール配信ツール、いずれも「メールを送信できる」という点では変わりがないものの、その特性や運用で押さえるべきポイント、自社のマーケティング施策に合っているかを考えないまま判断すると「ツールを導入したのは良いが、今ひとつ使いこなせない」となってしまいます。そこで今回は、EC事業者がリピーター施策に活用するという視点からMAツールおよびメール配信ツールの違いを説明し、それぞれの活用法をご紹介します。

MA(マーケティングオートメーション)ツールの生い立ちと普及

IT先進国であるアメリカでは、2000年代からすでに企業向けMAツールが普及し盛んに活用されてきました。MAツールは元々、広大な国土を有するアメリカで対面商談に代わる顧客育成のためのツールとして生まれました。都度相当な時間と費用をかけて訪問するよりも、メールなどインターネットの活用によってより効率的にアプローチを行いたいというニーズに応え、BtoBビジネスの効率化と効果性を向上させました。

BtoCの分野においても、昨今ECサイトでMAツールが広く活用されるようになってきました。消費者のコンバージョン(商品購入)情報だけでなく、購入に至る前後の行動からインサイト(深層心理)を把握し、個々の顧客のニーズや属性、嗜好性など多様な状態に合わせたマーケティングが求められるようになってきたためです。

例えば、同じ日に同じ商品を同じ数だけ購入した顧客でも、他人にプレゼントする用に購入した人と自分用に購入した人とでは、ECサイトで購入するまでにとる行動も再購入を案内した場合の購入確率も異なるでしょう。顧客ならぬ個客マーケティングが求められているのです。

MAツールでできること

MAツールが、顧客との関係性を強化するための仕組みとして誕生したツールであることは先述したとおりです。では実際にECサイトでどのように活用できるのでしょうか。ECサイトにおけるMAツールの役割として、「One to Oneマーケティング」が挙げられます。

MAツールを利用することで、BtoC向けECサイトでは閲覧ページや購入商品などの情報から、よりニーズにマッチした顧客アプローチを行うことができます。よく利用されるのはメールを活用したアプローチで、MAツールで特定の条件に合致する顧客を抽出し、セグメントごとにメールの文章や案内する商品を変えるなど、個々の顧客に最適化した内容を送ることができます。

また、ECサイトでの行動(閲覧ページや購入商品、購入頻度など)によってあらかじめ設定した内容を送り分ける「シナリオメール」、カートに入ったまま決済されていない商品をお知らせし再訪問を促す「カート放棄リマインド(カゴ落ち)施策」にも対応したものなどが存在します。

MAツールは、こうした手作業で行うには途方もなく時間がかかる作業を効率化し、マーケティング担当者の助けとなります。メールに加えて、サイトに再訪した際に表示する商品を出し分けたり、異なるクーポンを表示するといったページ表示の工夫や、LINEやSMS(ショートメール、ショートメッセージ)など、各種SNSサービスへのメッセージ送信に対応したツールもあります。

MAツールにできて、メール配信ツールでは対応が難しい施策

  • 公式LINEアカウントと連携し、カートに残った商品がある場合にメッセージを送信する
  • 会員登録後、商品購入に至っていない顧客にレコメンド商品を案内するメールを自動送信する
  • 一年のうちに複数回購入した顧客をロイヤルカスタマーと認定し、限定クーポンをメールで配布したりECサイト上に表示する
  • 商品詳細ページを閲覧したもののECサイトを離れてしまった顧客に対し、リマインドメールや、サイト再訪問時に関連商品をポップアップ表示する

メール配信ツールでできること

MAツールの役割の1つである「メールマーケティング」は、古くから専業ベンダーが存在する市場でもあります。一説によれば、世界で最初のメールマーケティングが行われたのはアメリカで、遡ること40年以上前の1978年のことだと言われています。ブロードバンドが一般に普及するはるか前から、メールは有用なマーケティング手法として活用されてきました。

90年代にアメリカで個人向けのメールサービスが相次いで立ち上がったことをきっかけに、企業も消費者向けにメールでのアプローチを行うようになりました。日本でもこの頃は携帯電話が爆発的に普及し、個人がメールアドレスを持つことが当たり前になった時代でした。2000年頃には企業向けにメール配信を専門に行うツールが登場し、メールによるアプローチはプッシュ型のマーケティング手法として一躍主役の座に躍り出ました。

「メール配信ツール」という呼称が一般的になったのも、2000年代と言われています。当初は登録されたアドレスに対し、同じ文面を一斉に送信することが一般的でしたが、顧客情報によるセグメント分けや効果測定といった機能に加え、最近では顧客管理やスコアリング、トラッキング、シナリオ配信、カゴ落ち対策の機能など、MAツールと近い役割を果たすものまで登場し、SMS・SNSなどチャネルの多様化にも対応しています。

MAツールとメール配信ツールの選び方・費用感

MAツールとメール配信ツールについて、メールを起点とした顧客関係の構築に役立つという点は共通していることを取り上げましたが、EC事業者がツールを選定する際にどのような点を押さえる必要があるのでしょうか。

ツール検討の前に

前提として、これらのツールが「見込み顧客の育成」や「休眠顧客の掘り起こし」を目的としたものであることを認識する必要があります。MAツールもメール配信ツールも、顧客の情報がない段階では何もできません。すなわち、ツールの導入にあたっては「すでに一定程度の会員数がおり、リピーターを増やしたい」といった課題を持っていることが前提となります。

実はこの点、EC事業者に限らず多くのMA導入企業が誤解している部分でもあります。「流行に乗ってMAツールを導入したのは良いが、売上に繋がらずコストだけがかさむ」というケースが散見されます。MAツールにしてもメール配信ツールにしても、しばらく離れてしまっている休眠顧客を掘り起こす、あるいは会員登録のみで購入履歴のない顧客を引き上げていくためのツールであるため、この観点が抜け落ちていると仕組みがうまく回らないので注意が必要です。また、「新規顧客を獲得する施策(新規会員登録キャンペーン、メルマガ会員登録を促すなど)」に同時に取り組むことも必要です。

MAツールの選び方

MAツールの導入に際しては、自社で必要な機能を見定めたうえで検討を行うのがポイントです。顧客情報管理とメール配信というシンプルなものから、ランディングページ(LP)の作成や問い合わせ・アンケートフォームの設置に対応したものなど、機能はさまざまです。価格も機能の充実度や登録できる顧客数によって大きく異なり、無料のものから月額数万円のものまで存在します。自社の課題や自動化・効率化したい業務を明確にしたうえで、適切なサービスを選ぶことが重要です。

メール配信ツールの選び方

メール配信ツールについても、最近では高機能なものが多く登場しています。MAツール同様、自社にとって必要な機能を見定めることが重要です。MAツールと異なる点としては、大量のメールを同時に高速で送ることを目的として作られたツールが多いことから、配信通数が無制限で月額数千円から使えるものなど、自社の規模感・コスト感に合わせたツール選びが可能であるという点です。これらの製品の中にも、MAツールで実現できるシナリオ配信やトラッキングなどマーケティング機能を充実させたものがあります。


加えて、最近のトレンドとしては「リッチコンテンツ対応」が挙げられます。2020年の最新調査では、ECサイトから届くメールの約8割がHTMLメールというデータもあり、ECにおけるメールマーケティングでは「HTMLメールを使いこなせるか」が大きなポイントとなってきます。コーディングの詳しい知識が無くても、ビジュアル性の高いHTMLメールを簡単に作れる機能が備わったMAツール・メール配信ツールがありますので、EC担当者が自力でHTMLメールの作成を予定している場合は、ツールの無料トライアルなどを活用して使い心地を試してみるのが良いでしょう。

MAツール、メール配信ツールを運用するポイント

導入検討にあたっては、実際に導入したのちにどのように運用していくかをイメージする必要もあります。担当できる人員が限られる場合、操作や設定に手間のかかる仕組みを導入してしまっては、せっかくの高機能なツールも十分に使いこなせないということもあるでしょう。自社でツール運用に割けるリソースも勘案し、自走可能な範囲からツール運用をはじめ、慣れてきたら活用の幅を拡げることも一案です。

例えば、MAツールやメール配信ツールの一部では顧客行動に応じ、あらかじめ設定した文面を送り分けるシナリオ配信が可能ですが、細かくシナリオを分岐させ膨大な数のコンテンツを設定しようとして運用を回しきれない、ということになってしまっては本末転倒です。どの程度の細かさとするかはそれぞれのケースで異なりますが、顧客数の分母の大きさや取り扱うカテゴリの数などを基準に考えると良いでしょう。

また、すでに自社で顧客データベースの運用やSFA(営業支援システム)を利用している場合、データをシームレスに連携できるかどうかも重要なポイントです。この点は、事前に社内システムの担当者や開発ベンダーに確認を行い、連携が容易か、データの形式を共通化できるかなどをあらかじめ確認する必要があります。

まとめ

今回は、MA(マーケティングオートメーション)ツールとメール配信ツールの違いについてご紹介しました。いずれの仕組みも既存顧客や休眠顧客を「リピーターやロイヤルカスタマーに育てる」ためのツールですが、MAツールはメールやSNSなど複数のチャネルに対するマーケティングを効率化するツール、メール配信ツールは大量メールの同時・高速配信を主軸においたツールという違いがあります。

自社ECサイトの課題を見直し、どちらのツールがその課題を解決するのにより適しているかを検討した上で、ツールを選びましょう。

ご相談窓口

MAツールとメール配信ツールどちらのツールを活用したらよいか相談したい方

HIT-MALL お問い合わせフォーム(アイテック阪急阪神株式会社)

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Cuenote FC お問い合わせフォーム(ユミルリンク株式会社)<外部サイト>

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Cuenote FC(キューノートFC)は、会員管理やメール配信後の効果測定をグラフィカルに表示。システム連携用APIなども提供しており、一斉配信からメールマーケティングまで実現できます。独自開発のMTA(配信エンジン)とノウハウで、月間のメール配信数41億通・時間1,100万通以上の高速配信を実現し、スマートフォンや携帯にもストレスなく高速・確実にメールを届けます。

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