Instagram広告は画像や動画を使った視覚的な訴求と詳細なターゲティング、一般ユーザーの投稿の間に自然に溶け込む広告スタイルなどが特徴的です。規模や業種を問わず、認知度向上やリード獲得を目的とした広告媒体として、EC業界でも広く活用されています。
そこで今回は、「Instagram広告の始め方が分からない」「Instagram広告って運用が難しそう」と感じている方のために、Instagram広告の始め方と、注意点や運用のコツを解説します。
そもそもInstagram広告とは?
Instagram広告は、Instagramのフィード(投稿されたコンテンツが流れる場所)やストーリーズ(投稿後24時間で消えるコンテンツ)などに表示される広告です。広告にリンクを設定し、ECサイトの商品ページやランディングページに誘導できます。広告のクリエイティブは、広告用に制作した画像や動画のほか、Instagramに投稿したコンテンツを使用することもできます。
Instagram広告の全体像やフォーマットの種類など、Instagram広告の基本については、「Instagram広告とは?広告の種類を解説」の記事を参考にしてください。
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Instagram広告とは?広告の種類を解説
Instagram広告を始めるにあたって知っておきたい基本編はこちら。Instagram広告の特長や広告の種類について、イメージ図とともに詳しく解説しています。
2種類のInstagram広告の運用方法
Instagram広告を運用する方法は2種類あります。1つ目は、Instagramのアプリで広告を運用する方法。2つ目はFacebook社が提供している無料の広告管理ツール「広告マネージャ」を使う方法です。
①Instagramアプリで運用
Instagramのアカウントを開設し、プロアカウント(ビジネスアカウント)に切り替えることで広告を配信できるようになります。Instagramのアプリだけで広告運用することもできますが、広告マネージャと比べて、利用できる機能が制限されるため、簡易的な運用方法だと考えてください。
1)アカウント設定
2)広告予算と掲載期間、オーディエンスの設定
1日あたりの予算(広告費)、掲載期間、オーディエンス(配信対象)を設定します。
②Facebookの広告マネージャで運用
広告マネージャを使うと、より詳細にターゲティング設定ができます。また、Instagram広告とFacebook広告の予算やオーディエンスを共通で設定することや、広告の効果を比較しながらInstagram広告とFacebook広告の予算の配分を最適化する運用が可能です。
当記事では、Instagram広告のメリットを最大化するためにも、広告マネージャでの運用を推奨しています。ここからは、広告マネージャを使用したInstagram広告の始め方を詳しく解説します。
Instagramで配信できる広告の種類
Instagram広告は「配置」「広告フォーマット」「目的」「ターゲティング」を設定することで配信できます。配置とは、Instagram広告を配信できる場所のことを言い、①フィード②ストーリーズ③発見タブ④IGTV⑤リールの5種類があります。広告フォーマットには、画像、動画、カルーセル、コレクションなどがあります。配置ごとに配信できるフォーマットが変わるので、広告の特徴にあわせて使い分けましょう。
Instagram広告の種類や配置、フォーマットについての詳しい解説は「Instagram広告とは?広告の種類を解説」の記事を参考にしてください。
広告マネージャを活用したInstagram広告の始め方
アカウント設定
まずFacebookのユーザーアカウントを作成し、広告を配信するInstagramアカウントと紐づけます。また、Facebookの広告マネージャを利用するには、Facebookページの開設が必要です。あらかじめ、ページを開設しておきましょう。
ここまでの準備ができたら、Facebookのメニューにある「広告マネージャ」を開き、キャンペーン、広告セット、広告を設定して配信準備を行います。
キャンペーン:広告の配信目的の設定
Instagram広告を配信する際は、キャンペーンの目的を設定します。キャンペーンの目的とは、広告の運用によってどのような成果を達成したいのかといった配信目的のことです。広告の配信目的は、「認知」「検討」「コンバージョン」の3ジャンルのうちどれに当てはまるのかを選択し、「認知」の中でも「ブランドの認知度アップ」、「リーチ数」などの詳細を指定します。
広告セット:詳細設定
広告セットとは、「誰に(オーディエンス)」「どこに(配置)」「いくらで(予算)」「いつまで(掲載期間)」配信するのかを設定する重要な項目です。
オーディエンス
Instagram広告の配信対象は、オーディエンスで指定します。オーディエンスの種類は「コアオーディエンス(詳細ターゲット設定)」「カスタムオーディエンス」「類似オーディエンス」の3種類です。なお、基本的にオーディエンスはFacebookの登録情報や行動履歴を参考に抽出されます。Facebookに紐づいていないInstagramのユーザーアカウントは、Insgram上の行動が類似している他のユーザーを参考に推測し、分類していると言われています。
①コアオーディエンス(詳細ターゲット設定)
性別や年齢、地域、興味・関心などで配信対象を絞り込むことができるターゲット設定です。
年齢は13歳から64歳まで1歳ごとに設定することが可能(65歳以上は「65歳以上」として指定)で、配信地域は、デフォルトで登録されている地名から選択するか、任意の場所を地図上で指定し、半径1km〜80km(Instagramアプリは半径1km〜30km)の範囲で選択することができます。また、学歴や家族構成、言語、引っ越しや転職などのライフイベント、興味・関心、利用デバイスなどで絞り込むこともできます。
②カスタムオーディエンス
「カスタムオーディエンス」は、ECサイトの顧客リストやウェブサイトの利用者など、広告主がすでに接触しているユーザーによって構成されたオーディエンスです。Instagram上で特定の行動を取ったユーザー(投稿に「いいね!」を押したユーザーなど)をオーディエンスに設定することもできます。この場合、広告マネージャに対象者のFacebookアプリユーザーIDのリストをアップロードする必要があります。
③類似オーディエンス
任意で作成したオーディエンスに類似したユーザーにリーチするのが「類似オーディエンス」です。例えば、既存顧客のうち、リピート率が高い顧客のカスタムオーディエンスを用意し、そのオーディエンスに類似したユーザーに配信するといった活用方法があります。
ページに「いいね!」を付けた人や、広告でコンバージョンした人など、行動データに基づいて類似性が判定されます。指定したオーディエンスとの類似性の高さを、上位1%〜10%までの間で調節することができます。
配置
配置の設定では、広告を掲載する場所を選択できます。 Instagram広告の配置には「フィード」「ストーリーズ」「発見タブ」「IGTV」「リール」があり、これら5つの配置から、任意の広告を1つ、または複数を選択できます。Instagram広告の配置については「Instagram広告とは?広告の種類を解説」にて詳しく解説していますので、こちらを参照してください。
なお、Instagram広告は「キャンペーン予算の最適化」機能を活用して、機械学習による広告運用の最適化が可能です。複数のクリエイティブを使っているキャンペーンとして、複数の広告セットを用意し、配信先としてすべての広告を設定すれば、広告セット単位で費用対効果がもっとも高いクリエイティブと配置の組み合わせを自動的に見つけて、優先的に予算配分を最適化します。
予算と掲載期間
ここでは広告を出稿のための予算、掲載期間、課金体系などを選択します。予算と課金の仕組みについては次章の「課金の仕組みと広告予算の目安」にて詳細に解説します。
広告:入稿するクリエイティブ
ここまで設定できれば、あとは広告(クリエイティブ)を作成していきます。画像や動画、カルーセルやコレクションなど様々なフォーマットが利用できるInstagram広告ですが、広告の配置によって使用できるフォーマットが制限されています。
詳しくは「Instagram広告とは?広告の種類を解説」の記事を参考にしてください。
課金の仕組みと広告予算の目安
Instagram広告の課金方法はインプレッション課金(CPM課金)、クリック課金(CPC課金)、動画視聴課金(CPV課金)、インストール課金(CPI課金)の4種類です。キャンペーンの目的または広告セットによって課金方法が決まっています。
例えば、キャンペーンの目的で「トラフィック」を選択するとCPM課金とCPC課金を選択できますが、「コンバージョン」ではCPM課金しか選択できません。「アプリのインストール」はCPI課金を選択することも可能です。なお、新しい広告アカウントを作成した場合、インプレッション課金で10ドル以上を消化するまでは、他の課金方法を利用できない点に注意してください。
インプレッション課金(CPM課金)
広告が表示された回数(インプレッション数)に応じて費用が発生します。インプレッション課金はInstagram広告で最も利用されることの多い課金方法です。
クリック課金(CPC課金)
広告がクリックされた回数に応じて費用が発生する課金方法です。
動画視聴課金(CPV課金)
動画広告がユーザーに視聴された場合に広告費が発生します。費用が発生する条件には、①ユーザーが動画を再生した時②ユーザーが10秒以上動画を再生した時③ユーザーが最後まで動画を見たときなどがあります。
インストール課金(CPI課金)
広告対象に設定したアプリがユーザーからインストールされた際に広告費が発生します。
広告単価はオークション方式で決定
Instagram広告の単価は、広告の目的やオーディエンス、広告枠(広告の種類)などに基づいてオークション方式で決まります。広告マネージャの「コストコントロール」で入札単価の目安を設定することもできます。
入札単価が高ければ広告が表示されやすいとは限りません。投稿に対するアクション率(広告に接触したユーザーが、クリック、いいね!、シェアなどの行動を起こす割合)が高いと推定される広告が優先的に表示されるためです。また、広告の品質も表示されやすさに影響します。品質の低い広告は、それ以外の広告と比べて単価が上がります。
Facebookは低品質な広告の特徴として次のような広告コンテンツを例にあげています。
- ・情報を故意に隠している(クリックしないと何を宣伝しているのかよく分からない)
- ・扇情的表現(大げさな見出し、動揺をあおる)
- ・エンゲージメントベイト(いいね!、コメント、シェアを稼ぐスパムのようなコンテンツ)
広告予算の目安は?
Instagram広告は機械学習によって予算配分を最適化するため、広告配信システムの学習期間として「情報収集期間」が設けられています。Facebook社は情報収集期間が終了するまで、通常は50件程度の課金が必要になるとしています。例えば、CPC課金に設定し、クリック単価が平均200円だった場合、50件のコンバージョンを取るには、1つの広告キャンペーンにて10,000円の予算で50件のコンバージョンを獲得するまでが情報収集期間になります。
Instagram広告の運用のコツと注意点
最初からターゲットを絞り込みすぎない
Instagram広告はターゲティングの範囲が狭すぎると、「ターゲットを絞り込みすぎて表示回数が上がらず、機械学習が働かない」「ターゲットをそもそも間違えている」など、広告の成果が出にくい場合があります。
Instagram広告の運用開始時は、ターゲットを絞りすぎず、まずはコンバージョンの件数を増やし、機械学習が働きやすくすることをおすすめしています。機械学習によって費用対効果が高い「勝ちパターン」が見えてきたら、効果の高い広告に予算を集中させると良いでしょう。
定期的な見直しをする
Instagram広告は自動運用ができるので、出稿しただけになっていませんか?出稿後は、広告効果のチェックと改善を繰り返しながら運用するのがポイントです。ここからは、特に定期的に見直しておきたいポイントの4つを解説します。
複数のクリエイティブを試す
Instagram広告は1つの広告セットあたり複数(最大6枚)のクリエイティブを並行して運用することができます。1種類だけで運用し続けるよりも、複数のクリエイティブを入稿して費用対効果の高いものを見つけましょう。なお、クリエイティブを見直すタイミングは1カ月に1回程度が目安です。
入札単価の高騰を早めに発見する
Instagram広告を自動運用にしていると、クリック単価が想定以上に高くなるケースがあります。クリック単価をこまめにチェックし、単価が想定以上に高い場合は、広告を一時停止するなど、費用対効果の低下を食い止めるよう心がけましょう。
まさかの運用中の審査落ちに注意
Instagram広告は掲載前にクリエイティブの審査があります。広告ポリシーに違反しているクリエイティブは審査落ちしてしまい、知らない間に広告が停止されているかもしれません。審査は通常24時間以内に完了することが多いですが、そうでない場合も数日で完了するとされていますので、審査落ちに気づいた時点で対応しておきましょう。
アカウントの連携切れに注意
複数のInstagramアカウントを広告マネージャで一元管理して広告運用を行っている場合は、すべてのInstagramアカウントをビジネスマネージャに追加しておく必要があります。ビジネスマネージャとは、Facebook広告やInstagram広告のアカウントを一元管理できるFacebook公式のツールです。ビジネスマネージャに追加することで、ビジネスマネージャ内の広告アカウントと連携できます。アカウントの連携が切れると広告出稿が止まってしまうため、誤って連携が切れないように注意しましょう。
まとめ
Instagram広告は1日あたり1米ドルから運用でき、少額で始められる手軽さも魅力の一つです。運用開始時は、ターゲットを絞りすぎず広く配信し、機械学習による広告配信システムに運用を任せながら様々なパターンで配信、改善を繰り返していくことで、自社に合った配信方法に予算をよせていくのが良いでしょう。
Instagram広告をまだ試したことがないEC事業者の方は、本記事で紹介した運用のコツや注意点を踏まえ、ぜひ運用に挑戦してみてください。
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