ECサイトを運用していく中で、日々の業務に追われ、その日その日の運用を続けることで手一杯になっていませんか?
もしそんな状況にあるとすれば、いずれ売上が頭打ちになってしまうかもしれません。ECサイトを継続して成長させるには、常に新たな施策を考え、実行し、それを振り返って改善を重ねることが重要です。
そこで役立てたいのが、ECサイトのアクセス分析業務を効率化してくれるツールです。本記事では、無料で使えるサイト分析ツールを紹介します。
アクセス分析:GA4
Google アナリティクス4(以下GA4)は、Googleが提供するアクセス解析ツールです。Webサイト全般で活用できるツールですが、その中にECサイトのアクセス分析に特化した「eコマース設定」機能もあります。
アクセス解析ツールは、ECサイト運用において必須といえるツールです。その中でもGA4は、無料で利用できるツールでありながら高い機能性を持つことで、多くのECサイトで活用されており、アクセス解析ツールのスタンダードとなっています。
まず、GA4では、「レポート」機能により、以下のような「ユーザー」に関するデータと、ユーザーのWebサイト上での「行動」に関するデータを収集・分析できます。ユーザーの行動に関するデータは、「イベント」と呼ばれます。
ユーザーに関するデータ
- ユーザー属性:ユーザーの年代・性別・地域など
- テクノロジー:ユーザーが使用しているデバイス・ブラウザなど
イベントに関するデータ
- 集客:ユーザーの流入元(チャネル、参照元、メディア、キャンペーン、広告など)
- エンゲージメント:閲覧・コンバージョンなどの行動
- 収益化:ユーザーのeコマース行動やアプリ内購入などの情報
- 維持率:初回訪問後の再訪頻度や閲覧・コンバージョンなどの行動
上記のうち、「収益化」は、特にECサイトに関するデータです。eコマース設定を実装していないとデータが表示されませんが、実装することで次のようなデータを収集・分析できます。
指標名 | 意味 |
---|---|
アイテムの表示回数 | 商品詳細ページなどで商品がユーザーの画面に表示された回数 |
カートに追加 | カート追加ボタンなどを押して商品をカートに追加した回数 |
表示後カート追加率 | カートに追加÷アイテムの表示回数 |
eコマースの購入数 | 商品を購入した回数 |
表示後購入された割合 | 購入回数÷表示人数 (※分母が表示回数ではないことに注意) |
商品の購入数 | 商品の購入個数 (1回の購入で3個購入した場合、eコマースの購入数は1、商品の購入数は3) |
アイテムの合計収益 | 売れた商品による収益金額 (消費税や送料などは含まない) |
また、「探索機能」を使うことで、ユーザーがECサイトを訪れてから購入に至るまでの各ステップにおいて、どのような行動が生じ、どの程度の離脱が起きているかといったことも分析できます。
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GA4はGAの計測方式を統一して生まれたもの
GA4は、2020年10月に正式リリースされました。GA4は、それ以前のGAの計測方式を統一して生まれたものです。もともとGAのリリースは2005年のことで、当時からECについて計測できる「eコマース」機能はありましたが、その計測対象は購入完了ページのみと限定的でした。
その後、2014年にECサイト内で発生するさまざまな情報を取得できる「拡張eコマース」という機能がリリースされました。ただし、eコマースと拡張eコマースは計測の仕組みが違うため、併用することができませんでした。そこで、GAへの機能の追加・改善により混在していた計測方式の違いを統一して生まれたのがGA4です。
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流入分析|Google Search Console
Google Search Console(サーチコンソール)もGoogleが提供するツールで、無料で利用できます。ECサイトに限らずWebサイト全般を対象としています。すでに設定されている方がほとんどかと思いますが、Search Consoleでは、サイトをGoogleにインデックス登録させるために有効となるサイトマップの登録やURL検査ツールの利用ができます。
また、Google検索結果におけるそのWebサイトの掲載順位や検索クエリ(ユーザーが検索したときに実際に使用した単語や単語の組み合わせ)を簡単に確認でき、管理や改善を行うのに役立ちます。
具体的には、以下のようなデータを分析可能です。
- ・Google検索におけるWebサイトの表示順位・表示回数・クリック数
- ・Google検索でWebサイトが表示されたときのキーワード
- ・Webサイトにリンクしている外部サイト
ヒートマップ・ユーザーアクション解析|Microsoft Clarity
Microsoft Clarity(マイクロソフト クラリティ)は、Microsoftが提供する無料のヒートマップツールです。サイトを訪れたユーザーがサイト上でどのような行動をしているのかを視覚的に解析できます。
具体的には、以下の機能によるデータ解析が可能です。
ダッシュボード
セッション数・クリック率などWebサイトの状況を一覧で確認できます。
ヒートマップ
訪問ユーザーのクリック率やスクロール距離を色分けで可視化できます。
レコーディング
ユーザーがサイトを訪れてから離脱するまでを録画できます。ユーザーのマウスカーソルやスクロールの動きも含めユーザー行動を録画再生することができます。コンテンツ内容に過不足はないか、サイトの導線が適切か、回遊性はどうかといった観点で客観的に確認するのに役立ちます。
また、Microsoft Clarityは、Google アナリティクスとの紐づけも可能です。これにより、Google アナリティクスでのセグメント設定や取得したデータに基づき、Microsoft Clarityで特定のユーザーの記録を確認できるようになります。
例えば、広告からの流入ユーザーのデータに絞り、ヒートマップやレコーディングで表示することが可能になります。この他にも、Googleアナリティクスのセグメントを反映したデータ表示の絞りこみが可能です。
競合サイト分析|Similerweb
Similerweb(シミラーウェブ)は、イスラエル発のツールです。対象のWebサイトのURLから、そのWebサイトのアクセス状況を分析できます。シンプルなアクセス分析だけなら無料で利用でき、さらに高度な機能を利用したい場合は有料プランも用意されています。
Similerwebの特徴として、自社サイトのみならず他社サイトの分析も可能です。そのため、競合サイトの分析にも活用できます。
アクセス分析の利用方法は、Similerwebの公式サイトに設置された検索窓に、調べたいWebサイトのURLを入力するのみです。分析対象に指定したWebサイトについて、以下のようなデータを見ることができます。
カテゴリ | 確認できる内容 |
---|---|
Traffic and Engagement Analysis | アクセス数・平均滞在時間・直帰率・PV数など |
Geography & Country Targeting | アクセス元の国・地域 |
Audience Demographics | 訪問ユーザーの性別・年代・興味関心 |
Similar Sites & ○○(対象のWebサイト)Competitors | 類似の競合サイトとの比較 |
Top Marketing Channels | 流入元チャネル |
Top Keywords by Traffic Share | 流入キーワード |
Referral Traffic | 流入元のWebサイト |
Display Advertising Traffic to ○○ ○○(対象のWebサイト) | ディスプレイ広告からの流入 |
Social Media Traffic to ○○(対象のWebサイト) | SNSからの流入 |
Outgoing Links from ○○(対象のWebサイト) | 訪問後に訪れたWebサイト |
なお、Simelerwebは、同社が抱えるモニターの行動を基にアクセス状況を推測により算出する仕組みです。そのため、推測値がベースとなっています。
また、アクセス数の少ないWebサイトの場合、実際の数字と乖離が大きくなる可能性があります。そのことを念頭に置いて、数値を参考にしてください。
データレポート作成|Looker Studio
Looker Studio(ルッカ―スタジオ)は、Googleが提供する無料ツールです。もともとは「Googleデータポータル」という名前で、2022年10月に改称されました。Looker Studioでは、Google アナリティクスやGoogle Search Consoleなどのさまざまなデータを取り込んで、レポートを作成できます。これにより、複数のツールのデータ収集・分析から、必要なデータのみを抽出してひとつのレポートにまとめることができます。また、レポートのレイアウトやデザインは自由に変更できるので、レポートの作成者や共有相手に合わせて見やすく報告しやすいレポートを作成できます。
レポートは、URLの共有またはLooker Studio側での権限付与をすれば簡単に共有できます。Looker Studioを使わない場合、共有したいデータを保有する各ツールにそれぞれアクセスして確認してもらう必要があり、各ツールでの権限付与の管理などが煩雑化しがちです。一方で、Looker Studioを使えば、共有したいデータを抽出してひとつのレポートにまとめることができるので、そのレポートを共有するだけで、社内外問わずデータ共有が簡単になります。
また、Looker Studioで作成したレポートは、対象とする期間やデバイスなど表示するデータの条件を、プルダウンで選択して簡単に切り替えられるので、閲覧したい条件ごとにレポートを作成するという必要もありません。GA4などのデータを蓄積できるツールとLooker Studioをかけあわせて活用することで、複数ツールのデータを使ったサイト分析や分析結果の共有など、EC担当者を悩ませる日々の運用業務を効率化するのに役立てたいツールです。
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UAやGA4などの複数データからレポートを作成できるLooker Studioの特徴を、GA4の「レポート」「探索」機能との違いも含めて、解説しています。
まとめ:ECサイト運用の効率化には適切なツール活用が必須
ECサイトは、売上を作るチャネルのひとつです。ECサイトを運用することで、新たな売上の柱を作るとともに、顧客データ・購買データなどさまざまなデータを収集できます。特に自社ECにおいては、それらのデータをうまく活用することが、売上を伸ばし続けていくために重要です。データを豊富に収集できることは、自社ECならではの強みといえます。
データ活用においては、効率化を徹底しましょう。データ分析が業務の主体となってしまわないように、効率的にデータを分析し、そこから売上向上のために効果的な施策をいかに実施していけるかが大切です。
本記事で紹介したツールは、基本的に無料で使えるもので、ECサイト運用において定番のツールです。まずは活用を検討してみて、自社のECサイト運用体制において、効率的に使えるものから導入していきましょう。
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