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【2023年最新版】eコマース(EC)についてあらためて知っておくべきこと~EC市場規模や成功に向けてのポイントもわかりやすく解説
ECサイトを運営するにあたり、基本的かつ重要で知っておきたい項目をまとめました。ECサイトを立ち上げる方法や成功に向けてのポイント、知っておきたい市場の動向などをまとめていますので、ぜひご覧ください。
経済産業省が2021年7月に公表した「令和2年度 電子商取引に関する市場調査」によると、2020年における国内のEC市場(物販)は伸長率21.71%増の12兆2,333億円でした。新型コロナウイルスの感染拡大で巣ごもり需要が高まり、物販ECの市場規模が算出されるようになった2014年以降では、もっとも高い伸長率です。EC化率は前年から1.32ポイント上昇し、8.08%に拡大しました[1]。
物販のEC市場が大きく成長した一方で、旅行予約サイトなどサービスECの市場の伸長率は36.05%減の4兆5,832億円に縮小。その結果、日本国内のEC市場全体(物販、サービス、デジタルコンテンツの合計)は調査開始後では初めて前年を下回りました。
市場環境が激しく変化するEC業界を勝ち抜くには、マーケティング戦略の指針となる基礎データを把握しておくことが欠かせません。そこで今回は、経済産業省が公表した「令和2年度 電子商取引に関する市場調査」資料を中心に、通販・EC市場に関連する主なデータを解説します。また、データを読み解き、2021年以降のEC市場のトレンドを考察します。
実は2020年の国内EC市場は前年より減少
まずは2020年の日本国内における「BtoC-EC(消費者向けのEC)」の市場を俯瞰的に見ていきましょう。
BtoC-EC市場は「物販系分野(以下、物販EC)」「サービス系分野(以下、サービスEC)」「デジタル系分野(以下、デジタルコンテンツEC)」の3つのカテゴリがあります。2020年は物販ECが前年比21.71%増の12兆2,333億円、サービスECが前年比36.05%減の4兆5,832億円、デジタルコンテンツECが前年比14.90%増の2兆4,614億円でした。
最大の注目ポイントは市場規模が前年をわずかに下回ったこと。物販ECは伸びたものの、旅行予約やチケット販売などのサービスECが大幅に縮小したため、物販・サービス・デジタルコンテンツを合計したBtoC-EC市場規模は前年比0.43%減の19兆2,779億円でした。
BtoC-EC市場規模の経年推移(単位:億円)
物販系分野は全カテゴリで2桁成長
物販系分野のBtoC-EC市場規模およびEC化率の経年推移
先述のとおり、物販ECの市場規模は12兆2,333億円となり、たったの5年で1.69倍にまで拡大しました。その大きな要因は、2020年春以降、新型コロナウイルス流行の影響による巣ごもり消費で、これまでオフラインで購入していた食品や日用品などの生活必需品をオンラインで購入する消費者が増えたほか、自宅での生活を充実させるために家電や家具、AV機器などの需要が高まったことは「書籍、映像・音楽ソフト」のEC化率に伸びがあったことと関連があると考えられます。
物販系分野のBtoC-EC市場規模(カテゴリ別)
また、物販ECの市場規模をカテゴリ別にみると、8つのカテゴリ全ての成長率が10%を超えました。「食品、飲料、酒類」「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」「生活雑貨、家具、インテリア」「衣類・服装雑貨等」は市場規模が初めて2兆円を突破しています。
物販ECにおける商品カテゴリ別の市場推移
商品カテゴリ別EC市場規模の年次推移(2015~2020年)
物販ECにおける分類別(商品カテゴリ別)のEC市場規模の年次推移をまとめました。 カテゴリは「食品、飲料、酒類」「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」「書籍、映像・音楽ソフト」「化粧品、医薬品」「生活雑貨、家具、インテリア」「衣類・服飾雑貨等」「自動車、自動二輪車、パーツ等」「その他」の8種類です。前回までは「事務用品、文房具」も独立したカテゴリでしたが、今回は「その他」に統合されています。
世帯支出は「食品」「家電」は増加、「衣類」はマイナス
1世帯あたりのカテゴリーごとの年間平均支出金額(単位:円)
EC以外も含めた商品カテゴリごとの年間消費額(1世帯あたり)を見ると、「食品、飲料、酒類」「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」「化粧品、医薬品」「生活雑貨、家具、インテリア」の金額は前年を上回っています。
自宅で食事をする機会が増えて食料品の購入金額が伸びたほか、自宅で過ごす時間を充実させるために家電やゲームなどの需要が高まったと考えられます。一方、「衣類・服飾雑貨等」の支出額は前年比18.1%の減少でした。
商品カテゴリごとの世帯支出とEC市場規模の変化を照らし合わせると、「食品、飲料、酒類」「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」「化粧品、医薬品」「生活雑貨、家具、インテリア」は市場全体の成長に加え、EC市場も伸びたことが分かります。一方で「衣類・服飾雑貨等」は市場全体が縮小した中で、EC市場規模は増加しているので、販売チャネルが実店舗からECにシフトしたようです。
旅行予約やチケット販売の低迷による大打撃を受けたサービス系分野
サービス系分野のBtoC-EC市場規模
新型コロナウイルスの感染拡大の防止策として、旅行や外食、イベントの自粛が求められ、サービスECの市場は大幅に縮小しました。「旅行サービス」は前年比60.24%減の1兆5,494億円、「飲食サービス」は前期比18.03%減の5,975億円、「チケット販売」は前年比65.58%減の1,922億円でした。
2020年後半はオンラインイベントのチケット販売も活発になり、家にいながら現地滞在者に観光案内をしてもらうリモート観光などのサービスも見られるようになりましたが、それでも大幅減は避けられない結果となりました。
自宅で過ごす時間が増えたことで需要が伸びたと思われる「フードデリバリー」の市場規模は3,487億円です。なお、「フードデリバリー」が調査対象として独立して掲載されたのは今回が初めてですが、飲食サービス市場の売上の約6割程の規模となっており、在宅需要の高まりが窺えます。
ステイホームの影響か デジタル系分野は大幅成長
デジタル系分野のBtoC-EC市場規模
電子書籍や音楽・動画などの配信を対象としたデジタルコンテンツECのEC市場は大きく成長しました。「電子出版(電子書籍・電子雑誌)」は前年比36.18%増の4,569億円、「有料動画配信」は前年比33.10%増の3,200億円となっています。
2019年と2020年のEC市場動向の変化
実店舗からECへ、購入チャネルのシフト
ECサイトやネットショッピングでの消費額が増えたことは、総務省の「家計消費状況調査」からも読み取ることができます。さて、これは単純に消費者の消費額が増えた結果なのか、あるいは購入チャネルが実店舗からECにシフトした結果なのでしょうか。視点を少し変えて、小売業全体の市場規模を見ていきましょう。
小売業全体の商業販売額および主な小売業態別商業販売額
2020年の小売業全体の販売額(市場規模)は146兆4,570億円で、前年比0.9%増でした。業態別の販売額を見ると、「医薬品・化粧品」や「機械器具」の業態において増加している一方で、アパレル(織物・衣服・身の回り品)が落ち込むなど、商品カテゴリによって市場規模に変化があったものの、小売業全体で見ると市場規模に大きな変化はなかったようです。
1世帯あたりの財(商品)およびサービス支出の年間支出金額(単位:万円)
また、1世帯あたりの財(商品)・サービスの年間支出金額を見ると、2020年はサービスへの支出が2019年と比較して16万4,000円も下がっていますが、財(商品)への支出額は前年比+6,000円と微増です。
2020年は新型コロナウイルスの感染拡大によって経済が混乱したものの、小売業全体の販売額や、1世帯あたりの財(商品)への支出金額は実は大きく変わっていないことが分かりました。これらのデータを踏まえると、物販ECの市場規模が大きく伸びた要因は、小売業の市場規模そのものが伸びたわけではなく、消費者の購入チャネルが実店舗からECへとシフトした結果と言えるでしょう。
スマホECの市場規模割合が50%を突破、物販ECの成長をけん引
スマートフォン経由の市場規模の直近5年間の推移
物販ECにおけるスマートフォン経由の市場規模は、前年比46.1%増の6兆2,269億円でした。スマホECの比率は物販ECの市場規模の12兆2,333億円の50.9%を占め、初めて5割を超えました。スマホECの成長速度は目覚ましく、直近5年で市場規模は3倍以上に拡大しています。特に2020年の市場規模の前年比は+1兆9,651億円、物販ECの市場規模の前年比+2兆1818億円のうち、実に90.0%をスマートフォン経由での増加金額が占めました。
なお、2015年から2020年までの6年間で、物販ECの市場規模は4兆9,935億円拡大しました。同じ期間にスマホECの市場規模は4兆2,407億円拡大しています。つまり、物販ECの市場規模の拡大は、8~9割がスマホECによるものということになります。こうした数字を踏まえると、市場規模拡大の動きの中でPCサイト以上に、スマートフォンサイトの影響も大きくなっていると言えるでしょう。
スマートフォンはコミュニケーションの起点に
ECにおいてスマートフォンは、単なる販売チャネルの1つではありません。例えば、会員アプリで実店舗とECサイトのポイントを統合しオムニチャネルを展開するなどスマートフォンは顧客とのコミュニケーションの起点になります。また、ライブコマースやSNSコマースなどなどの新しい販売手法はスマートフォンを使うものが多いため、こうした新しい販売手法の広がりによって、さらなるEC事業の売上拡大には、ECサイトのスマホ最適化の重要性はさらに高まるでしょう。
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2021年のトレンドを EC関連データから考察
ここまで2020年の市場動向を見てきましたが、ここからは経済産業省や総務省、国土交通省などが公表しているEC関連の各種データや2021年上期の実績を踏まえ、今後のECのトレンドを考察します。
2021年1〜6月もEC消費額は伸び続けている
ネットショッピングの支出額の推移(2019年~2021年)
2021年上期(1〜6月)の時点では、EC市場はプラス成長で推移しているようです。総務省が公表した「家計消費状況調査 ネットショッピングの状況について(二人以上の世帯)-2020年(令和3年)7月分等結果」によると、1世帯あたりのネットショッピング支出額は1月以降、全ての月で前年同月を上回っています。
2020年の物販ECの成長率があまりにも高かったため、2021年は成長率という観点では鈍化する可能性はありますが、物販ECの市場は今年も前年を上回ることは必至でしょう。
物販ECはコンビニ超え、ECは小売のメインストリームに
2020年の物販ECの市場規模は「コンビニエンスストア」の市場規模(商品販売額、11兆5,034億円)を抜き、チャネル別ではスーパーに次ぐ第2位になりました。また、家電大型専門店や百貨店、ホームセンターの市場規模を優に超え、スーパーにも迫る勢いです。小売のチャネルシェアに劇的な変化が起きていることは、ECに取り組んでいる企業のみならず、全ての小売企業やメーカーが押さえておくべきトレンドです。
実際、メーカー企業のECへの注目が高まっており、過去弊社が登壇したメーカー向けECセミナーは定員を超える申込がありました。
関連資料
ECサイトの機能・集客等 運用に関するアンケート 【メーカー企業対象・2022年版】調査レポート
ECサイトを持つメーカー企業を対象に行った、ECサイトに実装している機能・ツール、集客方法、運用の課題に関するアンケートの集計結果をダウンロード資料として配布しています。他のECサイトの取り組みや運営状況について、情報収集のツールとしてぜひご活用ください。
2020年のチャネル別市場規模(販売金額・億円)
チャネル | 2020年 | 増減率 |
---|---|---|
スーパー | 148,112 | 13.1% |
EC(物販) | 122,333 | 21.7% |
コンビニ(商品販売額) | 115,034 | 4.3% |
ドラッグストア | 72,841 | 6.6% |
家電大型専門店 | 47,928 | 5.4% |
百貨店 | 46,938 | ▲25.5% |
ホームセンター | 34,964 | 6.8% |
なお、2021年上期(1〜6月)における実店舗の市場規模は以下のとおりです。2021年の各チャネルの市場規模を見ても、おそらく物販ECの市場規模はコンビニを上回り、スーパーに次ぐ第2位になりそうです。
2021年上期(1〜6月)のチャネル別市場規模(販売金額・億円)
チャネル | 2021年上期 | 増減率 |
---|---|---|
スーパー | 73,152 | 3.0% |
コンビニ(商品販売額) | 54,062 | ▲4.1% |
ドラッグストア | 35,720 | ▲1.4% |
家電大型専門店 | 23,336 | 3.4% |
百貨店 | 22,158 | 8.3% |
ホームセンター | 15,847 | ▲6.3% |
2020年は新型コロナウイルスの影響で、実店舗が営業時間を短縮するなど、ECサイトを活用せざるを得ない特殊な市場環境であったことは間違いありません。しかし、同様の状態が2021年9月現在も続いており、依然としてEC市場に追い風が吹いています。また、一度でもオンラインショッピングの利便性を実感した消費者は、今後もECサイトを使い続けることになるでしょう。
小売業界において、EC事業はもはや傍流ではありません。今後もEC市場の拡大は続く見通しであり、EC事業は小売業界のメインストリームと言って差し支えないでしょう。企業はEC市場の成長を踏まえたチャネル戦略が求められています。
スマートフォンの世帯保有率は約9割、パソコンは緩やかに下落
スマートフォンの保有率は上昇が続いているようです。総務省の「令和2年通信利用動向調査」によると、2020年にスマートフォンを保有している世帯の割合は86.8%で、前年比3.4ポイント上昇しました。スマートフォンの保有率が伸び続けていることが、スマホECの市場が拡大している一因と考えられます。パソコンの世帯保有率が緩やかな下落基調にあることを踏まえると、今後もスマートフォンの最適化は当然のこと、スマートフォンでの購買体験を中心に機能改善やUI/UX改善を考える必要があるでしょう。
送料値上げへの備えや、多様な配送オプションが必要に
2020年の宅配便取扱個数は前年比11.9%増の48億3,600万個でした。物販EC市場の拡大に伴い、宅配便の取扱個数も大きく伸びました。数年前から宅配業界の人手不足が深刻化する中で、大手宅配会社は段階的に送料の値上げを実施してきました。宅配便の取扱個数が今後も伸び続ければ、さらなる送料値上げが行われるかもしれません。送料無料(送料込み表示)のECサイトは、宅配会社の送料が上がっても耐えられる価格設定を検討しておく必要があるでしょう。また、送料が比較的安い荷物サイズに合わせて商品そのものの大きさを設計することや、商品の種類やサイズによって送料がもっとも安くなる配送サービスが選択されるシステムを導入するなど、送料値上げへの備えも検討しましょう。
なお、2020年4月は在宅率が高かった影響か、再配達率は前年同月比7.5ポイント減の8.5%でした。しかし、2021年4月の再配達率は11.2%で、2年前より低いものの、1年前と比べると上昇しています[2]。
物販EC市場の拡大が続けば、宅配便の取扱個数もさらに伸びて、宅配業界の人手不足問題が再燃する可能性があります。そういった状況も想定すると店頭受取やコンビニ受取、街中や駅などに設置した宅配便ロッカー等の充実や、置き配の信頼と安全を高めるための取り組みなどは、エンドユーザーの利便性向上に加え、再配達を削減する観点からも通販・EC業界全体で取り組むべき課題になるでしょう。
顧客とのコミュニケーションを強化し、リピーター育成を
今回の記事で解説したとおり、2020年は物販ECの市場が大きく伸び、その勢いは2021年も続いています。ECサイトの新規構築やリニューアルなど、EC事業を強化する絶好の市場環境と言えるでしょう。
しかし近年は、実店舗がメインだった小売企業によるオムニチャネル化などのEC事業の強化や、メーカーのDtoC参入、モールEC市場への出店拡大も目立ち、競争が激しさを増しています。EC市場が伸びているとはいえ、企業単位で見ると売上を簡単に伸ばせる市場環境ではありません。商品カテゴリによっては顧客獲得コストが高騰しているケースもあるようです。
こうした時代にEC事業者に求められることは、既存顧客との関係を強化し、LTVを高めることではないでしょうか。昨年来、新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、これまでオンラインでの買い物をあまり経験していなかった消費者もECサイトを利用しやすい環境です。新規顧客を獲得できるチャンスだからこそ、オンラインの買い物に慣れていない顧客でも使いやすいECサイトを作り、ECの利便性を実感してもらう工夫も必要です。そして、One to Oneの商品提案や、優良会員向けの特別サービスの強化、メルマガの活用やSNS運用などによる顧客との接点を活かし、新規顧客をリピーターへ育成していくことが一層重要になるでしょう。
【2022年版】EC市場をデータで読み解く - 国内BtoC-EC市場規模は20兆円超の大台へ -
本記事では、「令和3年度 電子商取引に関する市場調査」を基に、BtoC-ECを中心としたEC市場の主な動きと2022年以降のEC市場のトレンドを考察しています。