昨今、新型コロナウイルス感染拡大の影響と不要不急の外出の自粛を求められる中、消費者のEC利用頻度が増えています。MMD研究所が2020年5月に実施したインターネット調査では、3月以前と比べて総合EC(モール型ECサイト)の利用頻度が増えたと回答した人は3割を超えていました。
しかし、急激なEC需要の増加は「人材不足」に陥り、また早急なEC事業の立ち上げには「ネットショップの足」が課題となります。
採用や育成による人的リソースの強化も一つの手段ですが、専門性の高い人材の採用は難易度が高く、教育には時間もコストもかかります。そこでこの記事では、EC人材不足とスキル不足に悩むEC事業者に「運用代行サービス」の活用を推奨する理由と、自社にあった委託先の選び方を解説します。
EC運用代行サービスは何を代行してくれるのか?
ECサイトの更新、バナー制作、メール配信、商品登録、SEO、アクセス解析、広告運用、在庫管理、受発注、ささげ(撮影・採寸・原稿)、梱包、出荷、カスタマーサポートなど、EC運用業務は多岐に渡ります。以下のリストは、EC運用代行サービスが代行できる業務の代表例をまとめたものです。
EC運用代行サービスの代表例
- 業務フロー設計
- 現状の業務フローを整理し、効率化できる点や改善点を見出す業務を代行
- 制作支援
- 特集ページやバナー、メルマガなどクリエイティブの制作を代行
- 店舗運用支援
- 商品登録、ニュースの更新、バナーの差し替え、受発注などを代行
- プロモーション支援
- 広告運用やメルマガ配信などを代行
- サイト分析支援
- アクセス解析や広告効果分析を代行
- フルフィルメント支援
- ささげ(撮影・採寸・原稿)や在庫管理を代行
- 物流支援
- 入出庫管理、梱包、出荷などを代行
- カスタマーサポート
- メールや電話での問い合わせ対応を代行
EC運用代行サービスの3つのメリット
人材不足に悩むEC事業者にこそ運用代行サービスを検討することを推奨しているのは、次の3つのメリットを得られることが理由です。
EC運用代行サービス活用のメリット
- 本業に注力できる
- 採用や教育コストを削減できる
- 専門性の高い仕事をプロに任せて質を担保
本業に注力できる
ECサイトの運営には、受注・発注業務や商品登録・更新など、業務の幅が広いうえに数や頻度が多く、多大な業務負荷がかかります。
そのうちの一部の業務に運用代行サービスを活用することで、マーケティング、商品開発、ブランディングなどのEC事業を左右する重要な業務に集中することができます。本来取り組むべき売上を伸ばすための業務により多くの時間を費やしましょう。
採用や教育コストを削減できる
運用代行サービスを活用する2つ目のメリットは、EC担当者の採用や教育コストを削減できることです。
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、2020年5月の有効求人倍率は1.20倍と観光業や飲食業を中心に下がっているものの(※出典:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和2年5月分)について」)、エンジニアやデザイナーなどITスキル人材の採用はどこも苦戦しています。
運用代行サービスを上手に活用することで、採用や教育にかかる時間と費用を減らすことができます。
専門性の高い仕事をプロに任せて質を担保
ECサイトのクリエイティブ制作やリスティング広告の運用、サイト分析といった業務は、高い専門性が求められ、技術も年々変化します。その業務を専門としている人に任せた方が、教育コストや効率化はもちろんですが、質を担保できるというメリットもあります。
クリエイティブ制作ひとつとっても、ページやバナー、HTMLメールに加え、さらに最近は動画も重要なクリエイティブとなっています。また数年のうちに新たな種類のクリエイティブ制作が求められるかもしれません。
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委託先を比較する際に注目したい項目
運用代行サービスを提供している企業は多くありますが、サービス提供範囲や得意とするスキルは千差万別です。また、契約期間が1ヶ月更新と短期間で契約できるサービスもあれば年間契約のみのサービスもあり、契約内容にも注意すべき点があります。
この章では、運用代行サービスを比較検討する際、特に重要な3つの比較項目について、比較の仕方や注意点を解説します。
委託先選びで注意したいチェックポイント
- 得意領域とスキルを具体的に確認
- 料金体系を確認(単価制/月額制/成果報酬制)
- サービス提供スタイルを確認(A型/B型/C型)
得意領域とスキルを具体的に確認
運用代行サービスを提供している会社の多くは、自社ECサイトの運用を得意としている会社と、ECモールを得意としている会社に分かれます。また、自社ECサイトの中でも、ギフトや百貨店のような特殊な運用を必要とするEC業務を得意とすることもあれば、BtoB ECのような自社独自のフローに合わせた運用改善が得意である場合もあります。
他にも、プロモーションの中でもリスティング広告の実績や経験、スキル人材も豊富な一方、SNS広告はあまり知見や実績がないというケースもあります。EC事業で販売したい商材によっては、SNS活用を期待できないことは大きな痛手となるでしょう。
「ECのWEBプロモーションの実績の豊富さ」をセールストークにしていたとしても、さらに一歩踏み込んで、どのようなプロモーションを得意としているのかをよく確認してください。
導入実績も参考にしながら、得意とするECのプラットフォーム、事業領域、スキル、ツールなどを問い合わせて具体的に確認し、自社の課題を解決できるスキルと経験をもつ運用代行会社を選ぶようにします。
料金体系は単価制、月額制、成果報酬制どれがいい?
料金体系は単価制、月額制、成果報酬制の3種類があります。単価制は「特集ページ 1ページ○円」「商品登録1件につき△円」など作業ごとに単価が決まった金額を支払います。月額制は「月額30万円」など固定の費用を支払います。成果報酬制は売上に応じてその一部を課金されるもので、レベニューシェアモデルとも呼ばれています。
単価制は予算に合わせて作業量をコントロールできるものの、画像のリサイズやページのちょっとした改修にも都度費用が発生し、投資対効果は不安定です。
月額制も予算の計画を立てやすい一方で、月額費に含まれる作業工数分を使い切らずに終わってしまう月が発生することがあります。
成果報酬制は売上に応じて手数料が変動するため、売上次第では想定外の金額に膨れ上がる可能性があります。ただ、ROAS(投資対効果)は一定です。
それぞれのメリット・デメリットを組み合わせた月額制+成果報酬制という形式をとるサービスもあります。
できれば成果報酬制のサービスを選ぶことをおすすめしています。運用代行業者も売上が伸びれば自社の収益もあがるため、モチベーション高く対応してくれるでしょう。相場は10~30%程度のようです。
サービス提供スタイルはA型?B型?それともC型?
「運用代行サービス」のサービス提供範囲は各社様々で、All-round型、Brain型、Choice型のABC3つのスタイルに分かれます。
A:All-round型
業務の委託だけでなく、業務フローの見直しなど上流工程から任せることができ、制作、商品登録、プロモーション、在庫管理、物流、カスタマーサポートなど一連の業務を一挙に担うことができる、オールラウンダーの運用代行サービスです。HIT-MALLの運用代行サービスなどがこのAll-round型に当てはまります。
実際には最初から最後まですべてをまるごとお任せするのではなく、
「商品登録や受発注管理は自社で行い、特集ページやバナー制作、メルマガ制作などのクリエイティブはアウトソーシングする」
「カスタマーサポートと制作業務は自社で行い、フルフィルメントと物流はアウトソーシングする」
といった具合に、自社の人員体制やナレッジの有無などを鑑みて範囲を絞って委託します。
長期的に見て委託したい業務の変動や追加の可能性がある場合は、あらゆる方面に柔軟に対応できるAll-round型と契約をしておくと良いでしょう。
B:Brain型
Brain型はEC事業者のブレーン(脳)となって支援するタイプの運用代行です。EC事業の戦略、フロー整備などの上流工程のコンサルティングのみを委託し、ページ制作や商品登録、発送など実際に手を動かすのは自社で行います。
ゼロからEC事業を立ち上げる場合、スキルも経験もない中で、EC事業の戦略立案からフロー整備も自社で行うのは至難の業です。ある程度のEC業務の人材は確保できていて、ノウハウ不足を補うには、Brain型のECコンサルティングが必要となってくるでしょう。
C:Choice型
EC事業の運用業務の中でも「物流代行」「プロモーション代行」など特定の業務の代行のみなど特化する専門領域を選択してその道を極めているのがChoice型です。それぞれの領域に特化している分、知識やスキルのレベルは高いのが一般的ではありますが、複数社との契約が必要となり、コミュニケーションやディレクションの負担は高くなります。
注意点としては、EC事業に特化した運用代行業者ではない場合、EC全体像を俯瞰的に見ることができず、委託した業務が部分最適に終わることも多々あります。EC特化の運用代行業者ではない場合、EC事業の支援経験があるかは必ずチェックしておきたい視点です。
まとめ
近年は特にEC業界でECの専門的なスキルや知識をもつ人手不足が深刻化し、そのことが業績拡大のボトルネックになっているケースも珍しくありません。そのため、EC事業を立ち上げた当初から運用代行サービスを利用する企業が増えています。
EC事業の立ち上げ期にこそ運用代行によって人材不足を解消しつつ、ノウハウやスキルを吸収しながら徐々に内製化を目指しましょう。
一方で、変化が激しくスキルアップのスピード感が早い業務、自社で人材を確保することが難しい業務、地道な作業で工数が圧迫される業務などは引き続き代行してもらうなど、自社の状況に合わせて運用代行サービスを活用し、人材不足とスキル不足を補いましょう。
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