あわせて読みたい関連記事
ECサイト運用担当が知っておきたい運用業務の全体像
運用業務の全体像を把握することで、業務の優先順位が分かりやすくなり、目的やゴールを理解しやすくなります。本記事では、EC担当者が知っておきたいECの運用業務の概要を解説します。
ECサイトに顧客を呼び込む「Webプロモーション」には、リスティング広告やディスプレイ広告、検索エンジン最適化(SEO)、SNS広告、アフィリエイト、インフルエンサーマーケティングなど、さまざまな施策があります。
今取り組んでいる施策は、「オンラインストアの新規顧客を獲得したい」「ネットショップの既存顧客をリピート購入につなげたい」といった狙い通りの成果を出せていますか?
この記事では、Webプロモーションの手法を顧客のターゲット別に分類し、プロモーション施策の費用対効果を高める運用のポイントをお伝えします。
目的とターゲットごとに施策を使い分ける
Webプロモーションを行う際は、プロモーションの目的や、狙いたいターゲット層に合わせて最適な施策を選択することが重要です。
例えば、「商品の知名度を上げたい」のであれば、顧客の興味や行動履歴などの情報を元にリーチできるディスプレイ広告やSNS広告などが効果的。「購入促進」が目的なら、リスティング広告などが効果を発揮します。
顧客の関心度を
- 潜在層:商品を知らない消費者、認知しているが商品の購買意欲がない消費者
- 顕在層:商品の購買意欲があり、これから買おうとしている消費者
- 既存顧客:過去に自社のECサイトで商品を購入した顧客
の3つに分け、それぞれに合ったWebプロモーションの方法を分類すると、下表のようにまとめられます。
ターゲット層別のWebプロモーション施策例
潜在層 |
|
---|---|
顕在層 |
|
既存顧客 |
|
潜在層と顕在層で異なるアプローチ方法
ディスプレイ広告やSNS広告、インフルエンサーマーケティングのように、「受動的に接触するコンテンツ」は潜在層の認知向上に有効です。
一方、商品に興味を持ち、購買意欲が顕在化していると、検索エンジンで商品情報を探したり、商品を実際に使っている人の口コミをSNSで調べたりします。そのため、キーワード連動型広告であるリスティング広告や、検索エンジン最適化(SEO)によって顕在層を獲得できます。また、アフィリエイトサイトなども、商品について調べている顕在層の購入を後押しするコンテンツになります。
その他にも自社のリソースを活用して集客できるプロモーション方法も探してみましょう。例えば、小売業など実店舗をもつ企業なら、店舗サイトからECサイトへの誘導バナーを貼る、アパレルや雑貨などのメーカーはブランドサイトからECサイトへの誘導やインスタグラムなどのSNSからのECサイトへの誘導によって、アクセス数を増やすことができます。店舗サイトやブランドサイトを閲覧している顧客は、商品やブランドへの関心が高いため、ECサイトのコンバージョン率が高くなります。
潜在層向けアプローチ|SNS活用
SNSの集客効果をECサイトに活用すべき理由とは?運用の注意点も解説
メーカー企業に聞いたSNS運用に関するアンケート結果を含め、SNSのECサイトへの活用方法について解説しています。
顕在層向けアプローチ|検索エンジン最適化(SEO)
まずはここから!初心者でもできるECサイトSEO対策
SEO対策とは何か、なぜ必要なのかを理解したうえで、自社で取り組める基本的なSEO対策(キーワード&タイトル設定)をご紹介します。
既存顧客のリピート購入を促進する方法
過去に購入経験のある既存顧客とのコミュニケーションには、メルマガや自社アプリ、公式SNSアカウントなどが使われます。
リピート購入を促進するために、トライアル商品を購入した顧客にクーポンを送り、本製品を買ってくれた顧客には定期購入を提案するなど、マーケティングのシナリオを作ってトライアル→製品購入→リピート会員→ロイヤル化といった流れで顧客育成を行います。ロイヤル顧客は口コミの発信源となり、新たな顧客獲得につなげることにもなります。
メールを開封しない顧客やLINE公式アカウントに登録していない顧客に対しては、同梱チラシやダイレクトメールといった紙媒体を併用することでリピート率UPを狙いましょう。
リピート顧客の育成
EC事業者向けMA(マーケティングオートメーション)ツールとメール配信ツールの違いと活用法
メールやSNSなどのマーケティングを効率化するMAツールとメルマガ配信を効率化するメール配信ツールの違いを比較し、ECサイト運営への活用方法についてまとめています。
ECサイトのWebプロモーション業務の流れ
Webプロモーション業務には、プランニング、コンテンツの制作・入稿、運用、効果検証・改善の4ステップがあります。施策を実行する前に目標設定や施策の実行計画を作り、効果検証を行いながら施策の予算配分を改善するなど、PDCAを回すことが欠かせません。
プロモーション業務の流れ
(1) プランニング
販促プラン作成/競合調査/目標設定/KPI設定/広告プラン検討/予算調整
(2) コンテンツの制作・入稿
バナー作成/広告文・キーワード作成/広告アカウント作成/効果測定タグ設定/入稿
(3) 運用
コンテンツの差し替え・追加/入札調整/キーワードの追加・削除などの調整/異常値チェック
(4) 効果測定・改善
成果の確認/KPI達成度の確認/予算配分の最適化/運用継続・停止の検討/改善策検討
(1) プランニング
まずはプロモーションの戦略を立てます。Webプロモーションを行うことで達成したい目標(売上・アクセス数・新規会員数 など)を設定し、予算やターゲット層を踏まえて最適なプロモーション手段を検討します。
SNS広告は媒体によって利用者の属性も、ターゲット設定方法も異なります。Facebookは実名登録サービスのため、年齢層や家族構成、職業などを細かく指定して広告を配信することができますが、Twitterの年齢ターゲティングは幅が広く「18~24歳」「21~34歳」「35~49歳」などざっくりしたものです。どのような手段が最適なのか、各広告の特性を理解した上で選定しましょう。各SNSの特徴と年齢層別の利用傾向については「ECサイト集客に欠かせないSNSトレンドと年齢層別の利用傾向まとめ」の記事を参考にしてみてください。
プロモーションの手段が決まったら、施策ごとにKPIを設定することも重要です。
例えば、リスティング広告を行う場合、売上高をKGIに設定すると、売上高の公式(アクセス数×平均客単価×コンバージョン率)をベースにKGIの達成に必要なアクセス数をKPIとして設定します。さらに、そのアクセス数を達成するために必要な表示回数やクリック数などもサブのKPIに設定すると、施策の成果の進捗状況を確認しやすくなります。
ECサイト向け リスティング広告のKPI設計例
KGI:売上
= KPI:アクセス数(セッション数) × 平均客単価 × コンバージョン率
アクセス数
= サブKPI:表示回数 × サブKPI:クリック率
(2) コンテンツの制作・入稿
プランニングが完了したら、広告バナーや広告テキスト、動画などのコンテンツ、メルマガであればHTMLメールの原稿を用意します。コンテンツはできれば複数のパターンを準備してABテストをしましょう。
また、プランニングで設定したKPIの達成度を定期的に検証できるように、コンテンツを入稿する際は効果測定用のパラメータを必ず設定します。
(3) 運用
リスティング広告のような運用型広告は、キーワードの追加や除外、入札単価を調整するなど、広告を出稿した後も継続的に運用することが必要です。
また、コンテンツのABテストだけでなく、広告やSNSの配信時間やメールの配信時間、配信対象のターゲティングなどもABテストを行い、より反応率が高く、KPI達成率の高い条件を見つけていくことも大切です。
(4) 効果測定・改善
プロモーションは「効果検証」とセットで行います。計測する指標は、施策によって得られたアクセス数や売上高などのほか、広告バナーの表示回数、検索エンジンの表示順位、SNSのシェア数など、プランニングで定めた目的に合わせて取捨選択し、プロモーションのボトルネックを特定しやすくします。
効果検証の結果を踏まえ、効果が高い施策の予算を厚くし、逆に効果が低い施策は停止するなど、予算配分を調整して費用対効果の最大化を図りましょう。
Webプロモーションの費用対効果を高めるポイント
ECサイトのWebプロモーションの費用対効果を高める運用のポイントを解説します。
費用対効果を高めるポイント
- どこにボトルネックがあるのかを調べる
- 費用対効果の高いプロモーション施策を強化する
- 「狙った効果を得られたか?」を確認する
どこにボトルネックがあるのかを調べる
Webプロモーションを実施した際は、広告などに接触した顧客がECサイトに流入した後の行動もチェックし、購入に至るまでのどこにボトルネックがあるのかを特定することが重要です。
例えば、リスティング広告を運用する場合、広告の表示回数やクリック数といったECサイトに流入する前の指標に加え、ランディングページでの離脱率、商品ページでの離脱率、注文フローでの離脱率など、ECサイト内の行動を一覧にまとめます。
ECサイトのボトルネック分析の例
広告自体はたくさんクリックされているのに売上が比例しない場合、ボトルネックはランディングページにありそうです。直帰率が高いなら、「広告の内容とECサイトのブランドイメージに乖離がある」可能性があります。今一度広告のコンテンツとECサイトを見比べてみましょう。
離脱率を調べるには、Googleアナリティクスなどでページごとの離脱率を調べたり、ヒートマップで離脱しやすいエリアを探したりすると良いでしょう。
費用対効果の高いプロモーション施策を強化する
同じ目的に対して複数のWebプロモーションを行う場合、各施策の費用対効果を比較した上で、効果の高い施策に予算配分を寄せていくことも重要です。費用対効果の算出は、ROAS(広告経由のECサイト売上高を広告費で割った値)を活用するとよいでしょう。
ROASの計算方法
ECサイトの広告施策のROAS比較例
施策 | コスト | 顧客数 | 平均単価 | 売上高 | ROAS |
---|---|---|---|---|---|
リスティング広告 | ¥2,000,000 | 1,500 | ¥10,000 | ¥15,000,000 | 750% |
Facebook広告 | ¥3,000,000 | 4,500 | ¥5,000 | ¥22,500,000 | 750% |
アフィリエイト | ¥1,500,000 | 1,500 | ¥8,000 | ¥12,000,000 | 800% |
「狙った効果を得られたか?」を確認する
Webプロモーションの効果測定を行う際は、「狙った効果を得られたか」を確認することが重要です。広告経由のアクセス数やクリック単価などの数値が良い結果であったとしても、元々の目的を達成できたかを忘れずに評価しましょう。
例えば、新規顧客の伸び率が課題のECサイトにおいて、新規顧客の注文を増やす目的でリスティング広告を活用した場合、広告経由の購入件数や売上のうち「既存顧客」を除いて、「新規顧客」だけの実績を確認する必要があります。
リスティング広告経由の売上高が目標を上回ったとしても、もし新規顧客で獲得する予定だった目標売上額の9割を既存顧客が占めていたら、当初の「新規顧客を増やしたい」という目的は達成できていません。
リスティング広告の配信対象から既存顧客を除外できていたかを確認する、ターゲットの指定条件を変えてみる、あるいは新規顧客を獲得するための新たなWebプロモーション施策の検討が必要かもしれません。
このように、Webプロモーションの成果を評価する際は、表面上の数字に惑わされないことも大切です。
広告運用やコンテンツ制作はアウトソースで生産性UP
Webプロモーション運用には、サイト分析や効果測定の知識を持った人材や入札調整に時間をかけられる人材が必要です。頻繁にコンテンツを差し替えるため、質の高いコンテンツを作り続ける制作スキルをもつ人材も求められます。必要に応じてアウトソース(外部委託)を活用して、生産性を向上しましょう。
委託先選びのチェックポイント
- 委託先の担当者と緊密にコミュニケーションを取れるか
- レポート提出で終わらず積極的に改善提案をしてくれるか
- ECの広告運用実績があるか
委託先の担当者と緊密にコミュニケーションを取れるか
1つ目のポイントは、定例ミーティング以外のタイミングでも、メールやチャットなどで提案や相談のコミュニケーションを取れる企業を委託先に選ぶこと。例えば、リスティング広告はマッチしていないキーワードを小まめに除外したり、状況を見て新たに追加する必要があります。追加候補のキーワードをEC事業者側から委託先に伝えることも大切ですが、委託先から自発的に提案してくれることが望ましいです。
レポート提出で終わらず積極的に改善提案をしてくれるか
広告代理店の多くは定期的に何ページにもおよぶ詳細なレポートをクライアント(EC事業者)に提出します。しかし、レポートのボリュームだけで判断してはいけません。レポートの情報量の多さよりも、レポートの考察から改善点や新たな取り組みをどれだけ提案できるか?の方が重要です。改善提案が業務範囲に含まれるのか、明確に対応範囲を契約書に記載すると、後々のトラブルを回避できるでしょう。
ECの広告運用実績があるか
リスティング広告などの運用型広告は、広告を出稿した後に入札単価を調整したり、キーワードを除外するなど地道な作業と、各業界に特化したノウハウが費用対効果に影響を与えます。高い成果を上げるには、キーワードごとの入札単価の相場をある程度理解し、さらに、商品購入につながりやすいキーワードを選ぶなど、ECならではの専門知識が欠かせません。運用型広告を代理店に委託する際は、ECサイトの広告運用の経験と実績が豊富な会社を選びましょう。
あわせて読みたい関連記事
EC運用代行には何をおまかせできる?注意したいチェックポイントと活用する3つのメリット
EC人材不足とスキル不足に悩むEC事業者に「運用代行サービス」の活用を推奨する理由と、自社にあった委託先の選び方を解説します。
まとめ
これまで見てきたように、Webプロモーションは目的に応じて施策を使い分けること、継続的なボトルネックの調査と改善が重要です。高い専門性と多大な人材リソースを必要とするため、適宜アウトソースも活用しながら、自社にあったWebプロモーション活動を行っていきましょう。